はじめに

突然の大雨が降ったのは、ほぼ開場と同じ17時ごろ。イベントに暗雲が立ち込める雨だったが、終わった今思えば、僕が確信しながらも、杞憂を抱き続けていたこの日の成功への、まさにその杞憂の部分を洗い流してくれる雨だったのかとも思う。
2016年7月3日。cllcdv.というサイトを一年間動かしてきた我々にとって、この日は、有り体に言うならば集大成。僕にとっては一年頑張った僕自身への、ご褒美のような1日だった。

この日は、僕たちの一周年記念であったのと同時に、京都から足を伸ばしてくれた、Gueとベランダのレコ発イベントでもあった。思い返せば、この日に至るまでのきっかけを作ってくれたバンドの一つが、Gueというバンドだった。昨年2月に出会い、その圧倒的な音像と言葉の力に打ちのめされ、それを人に伝えたくて文章を綴った。それは、2015年5月にスタートした、cllctv.のスタートラインナップのレビューのうちの一つとなった。彼らの持つ衝動が、僕の初期的衝動へと伝播したことの証明と言えるだろう。 ベランダと出会うきっかけになったのも、彼らで、ベランダが彼らGueと共同でレコ発を行う、という告知を見て、”最後のうた”を聞き、一言で言うと”完璧”さに抑え切れぬ興奮を覚え、次の日には出演をお願いしていたように思う。 この2バンドを名古屋に迎えるには、名古屋からも相当に強力な音楽を提示しなければいけない。こうして僕らが出演をお願いしたのが、ジャズマスターが鳴った後にとそらとあめだった。 ジャズマスターが鳴った後にとは、個人的にかなり付き合いが長く、彼ら自身のライブもたくさん見てきた。今年の4月にリリースしたビコーズアイワズヤング e.p.はそんな僕の目から見ても、贔屓目無しに、彼らの感性が具現化した、唯一無二のギターオルタナティブであった。 そしてそらとあめ。僕とともにこのサイトを一年間作り上げてくれたもう一人のライター、shijunがこの場に招き入れてくれたバンドだ。あの頃のみずみずしさが、素直にそのまま鳴っている。今もずっと鳴り続けている。そう感じた素晴らしいバンドだった。

長くなってしまいました。そろそろ開演でしょうか。

tomohiro

cllctv.を始めた当初からの僕の一つの目標。それはcllctv.の名を冠したイベントを執り行うということ。その一つの目標を達成した日、2016年7月3日。その話をさせてもらう前に、まずは雨の中会場に足を運んでくださった皆様方、そして、我々の企画を素晴らしい形で成立させてくださった出演者の皆様方に、多大な感謝を申し上げたい。本当にありがとうございます。

名古屋からジャズマスターが鳴った後に、そらとあめ、そして京都からGueとベランダ。自分が声をかけさせて頂いたそらとあめ。初めて彼女たちの「ねぇ」を聞いた時の衝撃はすごかった。00年代初頭の空気感を纏いつつ、現代的にアップデートされたサウンド。名古屋のバンドはそれなりに多く観てきたつもりであったが、名古屋にもこんなバンドがいるのか、と驚いたものだ。その名古屋というシーンでの特異性は今なお薄れていないとの確信もあり、今回誘わせていただいた。すでに決定していた三組とも、ベースのジャンルこそ違うものの根幹的な部分での親和性を感じた、というのもある。 京都から来てくださったGue。まだcllctv.立ち上げのための準備をしている頃、もう一人のライターであるTomohiroが話し合いの合間に聴かせてくれたことを思い出す。そんなバンドに、1年の時を経て完成したサイトの名前を冠したイベントに出ていただける、ということはやはり感慨深い。ジャズマスターが鳴った後にも、名古屋のバンドであるが、僕がまだ愛知県に住む前から知っており、勝手ながら応援させていただいているバンドでもあり、こういった形で共に企画を作り上げられることに喜びと人生の奇妙さを感じる。勿論、そんな個人的な感慨を抜きにしても、純粋に素晴らしい、強固なサウンドを持つ二組に出演していただけることが嬉しかった。そしてもう一組、京都からベランダ。京都という街の持つ空気、想像することしかできないそれを、それでもなお、まるで現実であるかのように聴かせてくれるバンド。優しく、暖かい音楽。このような素晴らしいバンドの名古屋での初ライブに関われることが喜ばしい。

shijun