Gue

3番手、ステージに上がるのは、同じく京都からGue。彼らの持ち味は何と言っても、そのライブのエネルギッシュさ。大音量の演奏と負けじと声を枯らしながら歌うGt/Vo.谷の姿は、鮮烈に我々観る側の心に突き刺さってくる。

ライブは、2nd e.p.「Character」の曲順を踏襲しながら進んでいく。1曲目は、”菜の花”。希望に満ちたイントロに、出だしからフロアの温度も俄かに上昇するのを感じた。彼らは、「過去から、今日を起点に変わってゆく未来」を描く歌詞が多く、その強い変化への憧憬は、この曲の「昨日までとりとめのなかった歌は特別になる」というサビの1フレーズにも現れる。上々の発車を見せた彼ら、谷の弾き語りのような形で、続く”80年心臓”が披露される。短くも重い言葉を書き留めるこの曲を挟み、ドラムのカウントからなだれ込むのは、”Hello My Anthem”。「遥かなる旅に出かけよう」というフレーズのままに、力一杯にオールを漕ぎだすようなこの曲に、歓声にも似た叫びが思わず上がる。

e.p.の中でも重鎮である、6分超のミドルテンポ、”ダブル”は、ライブで見るとより一層に存在が大きく感じられる曲で、エネルギッシュな曲の続く彼らのライブにおいて、この中間地点でのしおりは非常に大きな役割を果たしたように感じた。彼らに印象的なのは、各々の演奏とともに溢れる眩しい表情だ。そんな彼らの演奏は、Gueというバンドをステージで表現することの喜びを、ストレートに発散しているように感じられ、一丸となって音楽に向き合い、強い結束と共感とともにバンドをやっているのだという実感がひしひしと伝わってくるようで、こちらにも気持ちの昂ぶるが生まれる。

アコースティックギターを爪弾く”東京、使い捨てる人たち”を歌った谷が、エレキギターを再び手に取る。演奏されるのは、”フィールド”。ここに一度だけ来ると知っていながら、沸点を待ち望み、聞いていても、やはりそこに訪れると気持ちの昂りを抑えることは難しかった。たまらず拳が突きあがってしまう。こうして気持ちを落ち着ける間もなく、最後の一曲は、1st e.p. から”ひとりのすがた”だ。この曲は僕が初めて彼らと出会った日に、そのあまりのかっこよさに愕然としてしまった楽曲で、当然その曲が、最後に、今も変わらず演奏されているのを見て気持ちの抑えが利くわけがない。その日、Gueのライブで2度目の叫びをあげたことは、想像に難くないだろう。

tomohiro

三番手、同じく名古屋初ライブのGueの登場である。失礼ながら彼らのライブを拝見させていただくのは初めてだったのだが、彼らのサウンドのエネルギーとアンサンブルのあまりの強固さに度肝を抜かれた。一音一音が気を揺らし、心を震わせるほどの轟音。加えて、拳を突き上げたくなるような雄々しくキャッチーなメロディに、意識せずとも食い込んでくるメッセージ性の強い歌詞。完全にネクストブレイクのそれであるし、彼らのライブをこのタイミングで見れたことを幸運にさえ思った。

一曲目の「菜の花」のキャッチーなイントロは、早くも彼らの世界に僕たちを引き込んだ。轟音の中でも凄まじい存在感を持つGt.Vo.谷の歌うメロディもポップでありながらビックリするほど熱い。彼の存在感は轟音の中だけでなく、続く弾き語りの「80年心臓」でも鮮烈なメッセージと共に空間を完璧に支配していた。音楽への愛から来る、ある種の音楽に対する批判的メッセージすら込められたこの曲が会場にもたらした緊張状態を、音楽への愛を多幸感全開で歌い上げる「Hello my anthem」で一気に決壊させる。そんなことをされてしまえば、虜にならないわけが無いだろう。

かくして会場の空気を完全に自分達の物にした彼らは、スローテンポで6分超えの楽曲、「ダブル」でも狂おしいほどのエモーショナルを掻き立てる。これまでとはまた違った曲調の楽曲であるが、もはやそんなことは関係無い。楽曲の一瞬一瞬の持つエネルギーに喰らい付くことしか許さないぐらいに強固なサウンドにひたすら圧倒されるしか無いのだ。それは再びアコースティックギターに持ち替えての「東京、使い捨てる人たち」でも、冷たいスタートから、丁寧に熱量を積み上げていく「フィールド」でも同じことであった。今日唯一の1stEPからの選曲であり、ストレートに熱いメロディが聴けるとびきりパワフルなエモナンバー「ひとりのすがた」の最後の音が消えた時、会場は今日一の深い余韻に包まれていた。

shijun