ベランダ

“Let’s Summer”で始まった京都のベランダの音楽は、ハポンを形作り、印象付ける木目の色や香りとよくマッチしていたように思う。「ワンダーランドの成れの果て」。夢の一つの醸成の形であるあの場所でこの歌詞はよく染み入る不思議な響きを持っていた。Gt/Vo. 高島の醸し出す柔らかな空気感と、裏腹なニヒルな言葉尻は、”野球部のノリ”によく体現されているように思う。フォーキーな曲調とどこか冷めた目で見つめているような歌詞の言葉選びはまさにベランダらしい、暖かく見せるようにしてどこか冷静なクレバーさを描き出した曲だ。初めてでも何度目でも関わりなく、聴く人の心にすっと入り込み聴き入らせてしまう彼らの音楽に身を委ねていれば、いつの間にか”最後のうた”。僕が初めて聴いた時、思わず呆然とした彼らの純然たる代表曲だ。残酷さも感じるイントロのフレージングから、少しずつ温度感を与えていく高島のメロディ作りは、ライブという場で彼の声が揺れるほどに強く印象付けられ、より深い感傷へと引き込んでしまう。彼らにとって大事な一曲であるこの曲は、いつの場でも、大事であるだけの説得力を示し続ける名曲であり続けるのだろう。

本編を終え、システム上捌けることも難しいステージ上で、拍手に囲まれ楽器を持ち直した彼らが演奏したのは”お互い様”。前身バンドの頃からずっと演奏されてきている、これもまた彼らにとっての大事な曲だ。いかに尾をひく終わりがあっても、最後にこの曲があれば自然と笑顔になれるし、また次を見に行きたくなる、そんな素朴であたたかな一曲を最後に、この日のイベントは幕を降ろす。まだ窓からは日が差す、3月の寒さの残る一日。心にあたたかいものがすっと収まるような、そんな一日にすることができたと思う。

tomohiro

トリはベランダ。彼らの音楽はとてもメロディアスかつ、人を寄せ付ける温かみが宿っている。その温かみの奥底に宿る残酷さですら、心地良いように思えるほどに。

初めて彼らを見た時以来頭を離れなかった「Let’s Summer」、続けて新譜のリードトラックの「早い話」と言うスタートには嬉しいと同時に驚きを覚えた。その思い切りの良い出し惜しみの無さに。彼らの魅力である、独特のニヒルな感性で綴られた言葉が楽しい「野球部のノリ」でポップに聞かせた後は、打って変わって涼やかな「海になれたら」。美麗なメロディが全身に暖かい光を行き渡らせる。「大事な曲」と語り本編最後に演奏されたのは彼らが大事な曲と語る「最後のうた」。静かなエモーションを奏でる確かな名曲で本編を締めた。

shijun