Cookie Romance Nonsugar

この日のライブ一番手をつとめてくれたのは、cookie romance nonsugar。バンドとしてのキャリアはまだ短いものの、ツボを押さえたソングライティングとナイーブで繊細な歌詞世界は、内向的美しさを保ちながらも、時にひび割れ、感情を代弁する。代表曲である”夜明けまえ”でかき鳴らされるまだ青暗い窓の外を見やる濁った感情を表すようなギターフレーズに言いようの無い気だるさと、それでもなお昇る朝日への憧憬のような焦がれた気持ちや、”ふうせん”に綴られる柔らかな悪夢は、あの日あの空間の暮光差すハポンという場所でこそ、より輪郭を持って現実に姿を現していたように思える。

また、”さばくの夢”で聞こえてきたソリッドでざらついた感触のディストーションは、シューゲイザーという表現形態を用いながらも、それだけにとどまらずより柔軟に自分たちの感性を発揮していく、そんなこれから先への伏線となるような焦燥感があり、今後の彼らの音楽に、自然と期待は高まった。

tomohiro

一番手はCookie Romance Nonsugar。ざっくりとこのバンドを紹介するのであれば、浮遊感のある美しい男女ボーカルのインディーポップ、と語るのが最も適切だろう。しかし、彼らの魅力はその奥に秘められたエッジの効いた攻撃性、毒が秘められていることこそにあるように感じる。

1曲目の「ロータス」から、メインボーカルKawaiの甘く気だるく、しかし強い芯のある歌声とキラキラしたサウンドがハポンを包み、至福の時間が幕を開けた。続く代表曲「夜明けまえ」では仄暗くも希望も映える、まさに夜明け前の情景を白昼のハポンに描き出した。ライブ経験が少ないという彼らだが、それを全く感じさせない演奏であった。そのぐらいの至福の時間。最後に歌われたのはジャックスの「からっぽの世界」をも彷彿とさせる衝撃のフレーズで幕を開ける#5「ふうせん」。強い毒を孕んだ、美しく色濃い絶望が体を蝕む。その心地良さ。昼間のハポンにさらりとした染みを残してくれた。

shijun