ナツノムジナ

続くのは、東京からナツノムジナ。”艀”の逃げ水のような実体を持たない温度感とゆらめきは、まさしく僕が初めて彼らの音楽を聴いた時から感じていた風景で、その風景には確かに青い空と海が感じられる。そのイメージが続くのが、”凪”。こちらでは同じように水辺の情景を描きながらも、キラキラと乱反射する太陽光が眩しい水面を眺めているような繰り返されるアルペジオが水凪ぐ内海の港を想起させる。海を思わせる2曲が続き、次に聞こえてきたのは”プロペラ”。僕が彼らを知った時からずっと好きな曲で、ついにそれが眼の前で演奏されてしまっていたあの場所、間違いなく僕が一番はしゃいでいたことは言うまでも無い

逃げ水のような、青い音楽を得意としてきていた彼らの新たな一面をのぞかせたのが、最後に演奏された”天体”。宇宙をテーマに歌われる、”月の裏側”との2曲組シングルとしてリリースされたこの曲は、そのコンセプトを自由なギターのフレージングで描き出した。今までと違った濃紺のキャンバスに描き出されるのは、発光するきらめきで、それがチカチカと瞬く様が、大きくて幸福なギターのノイズの海の中で感じ取れたことは言うまでも無い。

tomohiro

3番手、ナツノムジナ。涼やかでキラキラとしたサウンドの楽曲をウリとしながら、そのライブパフォーマンスには圧倒的な熱量を孕んでいた。ハポンの会場全体を巻き込む程に。

「艀」から緩やかに始まったライブ。じっくりとゆっくりと、だが確実に現実の中に幻想を交差させていく。続くのはノスタルジックで優しい「凪」。どこかレトロな趣を漂わせるハポンという舞台を完全にモノにする。5曲目に演奏された新曲で、吸い込まれそうな程のサウンドスケープを堪能した後は、「天体」。煌びやかな浮遊感。まだ陽も落ちていないような時間でありながら、しかと夜空が見えた数分間。目と耳は釘付けなのに、無意識に体が揺れる至福の時間だった。

shijun