disc review2000年代後半、イギリスから予想外の掘り出しエモーティブ

tomohiro

It Takes A Stretch Of WaterSlowjet

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イギリスはエディンバラのカントリー/インディー・ロック、The Wynntown Marshalsの2015年作。についてのレビューを書こうとして今回筆をとったのだが、彼らを調べてたら見つけた、The Wynntown Marshalsのボーカルの前身バンド、Slowjetが超良くて、急遽そちらのレビューを書くことに切り替えた。

さて、そもそもThe Wynntown Marshalsがすでに相当マイナーなわけなのだが、一応説明しておくと、2007年に結成され、Wilcoなどからの影響を掲げ、土臭いカントリー・ロックを続けてきたバンドだ。僕が先日スコットランドはグラスゴーに旅行で行った際に、入ったレコードショップでジャケ買いしたことが出会いのきっかけ。そこは割とグラスゴーの中では評価の高いレコードショップで、そんな中で面出しされていた一枚だからこれはさぞと思って買ってきたわけだが、New Releaseで面出しされていたのに、リリースは2015年 笑。

そちらはこんな感じのバンド。

 

曲は普通にいいと思うのだけど、MVの2000年代初頭感が気になって仕方がない…!これ本当に2015年に録ったのだろうか。再生回数も日本のちょっと頑張っている若手インディーバンドくらいの温度感でなんともしょっぱい。いや、もちろんこのアルバムはなかなか良くて、だからこそレビューを書き始めたのだけど、たまたまもっといいSlowjetに出会ってしまったわけ。

さて、SlowjetThe Wynntown Marshals結成年である2007年にその活動を終えたバンドなのだが、何かっていうと、つまるところエモバンドである。このころからすでに感じさせるカントリー的大陸土臭さ(americanaっていう呼称があるんだね、こういうジャンル)を下敷きに、インディーで味付けされながらも、ハイトーンで頼りなげなボーカルは完全にエモのそれ。スピード感のあるイントロから、ハイトーンのコーラスで色付けるショートチューン、#1 “Can’t See You”は正直90年代後半にイギリスから出てたらなかなか話題をさらったんじゃないかと思えるくらいに不安定で清涼なエモチューン。絶妙に自由なリードギターのリバイバル感も手伝い、エモフリークにはとりあえず聞かせたい一曲。#2 “Faraway Places”は逆に2000年以降のスクリーモ的バーストを含んだ曲。夜明け前の薄暗さを思わせる静かなでやや冗長な歌メロとバーストする間奏のバランス感が味わい深い。#4 “The Reason”では頼りない追っかけコーラスが情緒を誘う。ここで#5 “What See You”はなんと6分超のスローエモで北欧的泣きバーストにグロッケンやストリングスの音まで重ねて涙腺への総攻撃。エモと呼べるものの全てをかじろうとして、そのどれもが結構いい。アルバム後半に入っていくと、#7 “Not One Of My Better Days”では売れなかったART-SCHOOLみたいな曲が出てきてまた最高。てかこれボーカル変わってね??#8 “Beautiful Thing”とかもはや邦楽じゃないこれ?日本のバンドが歌う英詞の曲みたいだぞ?ってなるような突然の変化を見せつけ、ジャパニーズオルタナっぽさも醸し出す謎の懐。そして#9 “Gold”はもはや説明不要。聞いて。

久しぶりに地中10mくらいのところから掘り出してきた気分のバンドだけど、とりあえずジャパニーズオルタナ、エモ好きに聞かせたいイギリスのamiricanaなバンドという、わけわからんコンテンツだけど、一回聞いてみてほしい。これ結構すごいバンドなのでは。

 

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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