disc review波乗りのナードボーイズとぬるい水しぶき

tomohiro

SnowdoniaSurfer Blood

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アメリカ、フロリダより4人組インディ・サーフ・ロック、Surfer Bloodの4thアルバム。2009年にデビューシングルをリリース後、USインディの一角として進んできた彼らだったが、初期メンバーのガンが発覚。治療の支援のためにYo La TengoReal Estate等様々なバンドがサイン入りアイテムや未発表音源をオークションに出し応援するも、むなしく2016年に死去。同時期にメンバーの脱退も続いたが、新たに2名のメンバーを加え活動を再開。今作は2017年にリリースされた目下最新作で、新体制での初音源でもある。

これまでも美麗なコーラスワークと真夏のプールくらいの温度感の楽曲を持ち味としてきた彼らだったが、新体制になってもそれは変わらず。むしろ、今作ではこれまで以上のキャッチーさで彼ららしい、「ナードボーイ(とガール)によるサーフィン」を楽しめる。

#1 “Matter of Time”はのっけからローファイなギターの鳴りと心地良くもフックを忘れないコード感が耳ざわり良く、ギターソロの釣り糸を引っ張るようなチョーキングも印象深い。

 

#3 “Dino Jay”はダイナソー何某を彷彿とさせるファズギターから一転、アルバム屈指の清涼感がサラサラと流れる一曲。とても素直なコード進行と、寄り添うようなギタープレイ、コーラスワーク。新メンバーとして女性が入ったことによるコーラスの厚みがよく感じ取れるのもこの曲の特徴だろう。一方で#4 “Six Flags in F or G”はニヒルなワンパターンのリフのみが地を行くストイックな曲。繰り返されるリフに次第に目の奥がチカチカしてくるような、船酔いに似た感覚を覚える。

#5 “Snowdonia”はきらめくアルペジオで幕を開ける大曲。アルバムタイトルでもある、Snowdoniaというのは、ウェールズの国立公園で、雄大な自然が美しい景勝地だ。日本を思わせる渓流や地下800mの洞窟を走る列車、雪を讃えるスノードン山とバラエティに富んだ観光地を多く有しており、この曲もその長大な自然の美しさを、どこかのどかに、カントリーに表現した一曲。インディロックといえばなんとなく曲尺が短く、シンプルな傾向を感じるかもしれないが、この曲にもインディの要素は数多く盛り込まれており、かの地をツアーで巡るようにしてよどみなく展開の切り替わっていくため緩やかに耳を傾けることができる。

これから季節はどんどんその暑さを増していくわけだが、うだる太陽の日射しや、ムッと来る青草の匂いや、べたつく潮の匂いや、そういった夏のフィーリングをプラスチックのような清潔さにまとめ上げるSurfer Blood。是非30度越えの昼下がりのおともに。

 

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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