disc review吹き出す汗も、白地に落ちれば色を映す

tomohiro

Stovallmicrowave

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アトランタの4人組オルタナティブロックバンド、microwaveの1stフルレングス。オルタナ・インディーのくくりって難しいなって思いながら、インディーロックの中でも他のジャンルの要素が垣間見えたりするとオルタナって呼んじゃいます僕は。あと、なんか重たいとオルタナっぽいって感じ?microwaveは基本のボーカリゼーションの泣き虫感とか、根底にあるコード感、音楽はUSインディーだなって思いつつも、そこに結構モダンな重さが乗ってきていて、ボーカルも突然男臭いシャウトとかしちゃうし、そういう意味でオルタナティブだなって思うわけです。つい最近、SERGENT HOUSEの虎の子、Blis.を紹介しましたが、僕はそこの流れからこのバンドにたどり着きました、Youtubeで。キャリアの長さ的にはほぼ同じくらいかな?この2者、泣き虫なのにシャウトするボーカル、ヘヴィな演奏など、色々ガワの共通項はあるんですが、Blis.がエモ、ポストロックあるいはグランジからの発展系であり、よりサッドネスな音を出しているのに対して、microwaveはもっとメジャーで根明な要素が多くて、ともすればポップパンク周辺ともリンクしてきそうな感じがあるんですよね。僕はもちろんどっちも好きです。

 

彼らの代表曲と聞いて思いつくのは、実はこのアルバムの曲じゃないんですけど、この曲

これは2ndフルアルバムの曲なんですけど、この前半の泣きの入ったポロポロしたアルペジオからの、後半の歪んだボトムを落としたエモバースト的展開はアツい。2ndは1stよりもやや大人になって繊細さを増したアルバムでもちろんこっちもいいんですが、今日の気分的にはよりエネルギッシュな1stを聞きたいということで1stです。

#1 “Stovall”はアルバムタイトルでもありそれを一曲目に持ってくるという潔さ。ひっそりと、でも裏で存在感を示す汚く歪んだハウリングをイントロダクションに語り出されるメロディの切なさに太く刻まれるブリッジミュートとBlis.とは違って遠慮なくシャウトを連発する男臭さ。#2 “Grass Stains”はもうイントロのギターじゃかじゃかと独唱からのダダダ ダダダ ダダダがメロディックパンクに通じる気持ち良さで、リズムセクションでハーフに落としたり、しっかり8ビートで上げたりと、あるいはギターのクリーントーンの絡みでしっとりパートを入れたりとエモーショナルの様式美を気持ちよく決めてくる曲で絶対ライブで見たいなと思わせるもの。そして数曲開けるんですが、#5 “Mansion in the Sky”がまたすごくいい曲なんですよ。別に大きく共通項があるわけじゃないんですけど、タイトルも相まっていつもこの曲を聴くとSuperchunkの”Detroit has a skyline”を思い出すんですよね。どちらも特に説明はいらない、エバーグリーンな名曲だと思います。ライブでは歌われないんですが、ギターソロとその裏のハミングコーラスがすごくいいんですよ、ライブでも歌ってほしい。

 

この曲を山の頂上と見て、ここからはミドルテンポに寄せて聞かせながらゆっくりと山を下りさせる選曲になっていくんですが、”The Last”を超え、その先のラストチューンの”The Fever”は流石のバースト。余韻を残すべきところは残して、キャッチーに走るところは全力で。何をやるにしてもすごく汗臭さが垣間見えてついこちらまで気持ちが揺さぶられる、そういう音楽です。やっぱり重いのはいい。しっかり歪んでいると着地点を見つけたような心の落ち着きがあって安心して一緒に叫べますね。最近、こういうインディーエモ経由でちょっとモダンな音にしたバンドがアメリカにはちょこちょこ出てきている空気があるので、今後も掘り下げていきたいものです。

ちなみに冒頭で紹介した”Vomit”はMVもめちゃいいんで是非見て見てください。

 

「nobody else, nothing」

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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