disc review早熟の天才、フジファブリックの夜明け

shijun

アラカルトフジファブリック

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日本のロックバンド、フジファブリックのインディーズ1st。現在の3人体制と共通するメンバーは一人も居ないが、前期フジファブリックの中核にして今尚重要なピースを担っている志村正彦の青春時代が詰まったアルバムに仕上がっている。

情感とスピード感たっぷりのサマーチューン、#1「線香花火」でアルバムはスタート。夏っぽさも醸しつつ、決して爽やかじゃないのが初期の彼らの魅力である。随所のキメがクール。気恥ずかしくモヤモヤとした感情をコミカルに描き出した#2「桜並木、二つの傘」。狂ったムード歌謡の様な怪しげな雰囲気が癖になる#3「午前3時」。プログレやジャズなどの影響が爆発している間奏は必聴。勇壮な和メロが胸を打つ演歌風の#4「浮雲」。氣志團「ONE NIGHT CARNIVAL」の影響を受けたらしい四つ打ちディスコチューン#5「ダンス2000」。なぜ四つ打ちでこんなに楽しくない曲を作れるのかと綾小路翔氏も驚いたというエピソードも残っているほど、影響元を思わせない怪しげな出来に仕上がっている。ネオンサインの様なカッティングが心地よく、よく知らないが場末のアングラディスコを想起してしまう。

そして最後に収録されているのが彼らの代表曲#6「茜色の夕日」。今アルバム収録曲としては唯一後にシングルA面曲としてリメイクされた曲でもある。ノスタルジーと現実を対比させつつ、今もそんなに悪くないかもと思わさせられる様な染みる歌詞。すっと心に入ってくるようなシンプルなアレンジ。まごうことなき名曲である。後に発表された版と比べるとまだまだ荒さもあるが、そこを素朴さと捉えることもできる。

フジファブリックの原点にして既に変態性とポップセンスの同居した完成度の高い楽曲が聴ける一枚。フジファブリックはアルバムごとに色も変えていくバンドなので、近年のフジファブリックしか知らない人も是非手にとって見て欲しい一枚。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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