disc review旅路を終え、靴裏に詰まる小石に次の旅路を思う

tomohiro

Think Twiceスーベニア

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彼らの出発点であり、いわば原点であった1st demo、『Short Pieces』がリリースされたのは、2016年7月。それからわずか一年、11の新たな言葉を紡ぎ、彼らスーベニアは、日本の新しいオルタナティブミュージックの旗手となりうる度量を感じさせる、『Think Twice』をリリースした。あたたかみを持ちながらも省みの多い彼らの音楽をよく表す言葉であり、2つ目の作品としてのTwiceも意味合いも感じ取れる良い言葉だ。

ジャズマスターが鳴った後にというバンドが名古屋にはいた。そこではドラムを叩いていた和田尚は、このバンドの活動が休止となったのち、今度は自身がギターを手に取り、スーベニアのGt/Vo. となる。ドラムに触れていた際に感じられた、立体的なフレーズの構築のセンスと楽曲へのリズムからのアプローチは、まるでそれがそのままギターに移り変わったかのようにしなやかに耳に馴染み、彼の朴訥に思える歌声を支え、より詳細に描き出す。

そこに綴られる文章は、届かないものへの憧憬、もがく日々や感情の整理のはしがき、そして時には描写的に語られる感傷であり、まるで一冊の随筆を読んでいるような純文学的な手触りを持つ。そしてそういった漠々とした文字の群れは、地に足ついた漸進性を持ち、時にきらめくパステルカラーの断片のような瑞々しい楽曲に載せられ、非常に魅力的な響きを持って我々の元へ届いた。

「智に働くばかりも考えもの」と日々の浪費に想いを馳せる#1 “33”や、繰り返されるギターリフの裏でベースがメロディアスに旋律をたどる#4 “フラッシュ”、昼下がりを思わせるどこかひょうきんな耳触りの#5 “デスプルーフ”、語るに余るは切り捨てる必殺のショートチューン#6 “転車台”と表情を変えながら、大きな広がりを感じさせる歪んだギターの重々しさが大洋へ漕ぎ出す一艘の大志を思わせる#8 “ステイゴールド”では「please behave as usual」のワンフレーズがそこに一滴の感傷を落とす。そして続く#9 “免れ”へと独白が続き、たっぷりの心地よい重さの余韻をもって、ライブでもすでに定番となっている彼らの代表曲、#10 “taper, taper”へと物語は続けられる。

 

くるり、bloodthirsty butchersをはじめとした90~00年代のジャパニーズオルタナからの影響はいうまでもなく、それを持って、ここ数年の若手オルタナティブの代表格となりつつあるナツノムジナベランダ、Gueなどにその肩を並べる日もそう遠くなく感じられる、万感の『Think Twice』。是非一聴。

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WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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