disc review砂上のつむじ風と、薄曇りを割く燐光の流線型

tomohiro

Shell e.p.Cookie Romance Nonsugar

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名古屋で活動する4人組オルタナティブロックバンド、Cookie Romance Nonsugar。その2作目となる、”Shell e.p.”が先日リリースされた。結成は2015年とまだ日が浅いながら2017年初頭には初作となる”dawn e.p.”を発売、鼻をくすぐる微炭酸のようなギターノイズが優しくも仄暗い諦念を言葉にして吐き出す、シューゲイズサウンドと歌モノとしてのオルタナティブの彼らなりの接近として描き出す傑作であった。

音楽教室でメンバー同士が知り合い結成されたという少々変わった経歴を持ったこのバンドだが、彼らの作り出す楽曲は、芯としてあるメロディやコード進行の原型としての質の良さと、そこに味付けをしていく弦楽器のフレージングの引き出しの多さや、メロディの緩急をよく読み解いてさりげなく飾り立てる文脈への理解が見て取れ、それが聞いていて度々唸らせられる完成度の高さに結びついているように思う。

シューゲイズサウンドに接近した初作と比較して、今作は比較的乾いたギターロックサウンドなのが特徴だ。#1 “かざみどり”はカラリと鳴る冒頭のギターコードに感じられる予感、リードギターがそこに加わった瞬間に得られる、「あの頃の日本語ギターロック」への確信が気持ち良い楽曲で、Aメロとサビ、サビからAメロへと挟まれるギターリフの妙、歪んだギターサウンドをバックに柔らかな輪郭で伸びていくKawai とatsukoの男女ツインボーカルが甘酸っぱい楽曲。#2 “さばくの夢”はcllctv.主催企画で彼らのライブを見た時に、シューゲイザー、ギターポップを名乗りながらも、そこに止まらない彼らのこれからの表現の可能性を感じた楽曲で、その期待の通り、今作は食傷気味な「シューゲイザー」と呼ばれる大枠に取り込まれない、00年代の歌モノを彷彿とされるギターロックサウンドがより鳴っており、彼らのバックグラウンドとしての音楽がより強く現れた素直な作品となったように思う。

#3 “貝がら”は前作の”夜明け前”にも通じるようなミドルテンポソング。しゅわっと胸のどこかをほっそり締め付けるような仄暗さと、今作でほぼ唯一と言ってもいい、atsukoのコーラスでない独唱をここぞという見事なポジションに配置しており、まどろみに誘いながらもハッと目が覚めるような感覚を得る。そして、#4 “ロータス”。性急なドラムのビートが後ろから急かされ走り出すようなバタついた疾走感を彩る。要所要所で立体的な動きを見せるベースフレーズの妙とサビからギターソロへの流れ、大サビへの持ち上げ方に至るまで構成もよく練られており、実に心地よく伸びていく歌で思わず舌を巻く。

 

バンドで初めてのスタジオはART-SCHOOLのコピーであったと言う彼ら、まさに彼らの青春時代を彩ったであろう00年代後半のギターロックバンドからの影響(具体的にはGRAPEVINETHE NOVEMBERS等ではないだろうか)が見事に昇華された今作は間違いなく傑作であり、この次に訪れる作品を気が早いながらも期待し始めてしまう。

 

現在は名古屋のFILE-UNDERとライブ会場のみの取り扱いとなる今作だが、cllctv.の姉妹サイトとして僕が個人的に運営しているbookshelf distroでも取り扱わせていただくので、是非気になった方は購入してほしい。(入荷したらリンクが貼られます。)

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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