disc reviewニヒルなサイケデリック、鮮烈な脳内ループへ

shijun

その名はハシグチカナデリヤハシグチカナデリヤ

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20171月にメジャーデビューが決定した、ハシグチカナデリヤのインディーズ1stアルバム。ループマシンを巧みに利用した重厚でサイケデリックで切れ味が鋭いサウンドと、独特の色気を放つ歌声、佇まいが特徴。ソロプロジェクトであるが、このアルバムはバンドサウンドを基調として形成されている。元々はしぐちかずひろ名義で活動しており、その頃はもう少しポップ寄りの活動をしていた様。その経験や自身のルーツとしてthe beatlesなどの洋楽と共にスピッツや椎名林檎などのJ-POPなどもある事からか、クールでサイケデリックなサウンドながら、キャッチーなメロディが楽しめるのも特徴的である。

#1「ニュートリノシンドローム」。アトモスフィックなシンセの音色から、それを切り裂くように鋭いギターが現れ、それがどんどん重なっていく。圧巻。そしてそこに加わるのは、気だるげな色っぽさを纏いながら吠えるハシグチの歌声。サビに静かめな展開を持ってくるところも面白く、心を一気に掴まれる一曲である。ラスサビでは爆発。強烈なサイケサウンドを楽しめる#2Rachel」。重厚なビートの合間に挟まるシンセ、ギターのおかずがまた鮮烈で、レトロな感じのシンセサウンドも入ったりしつつ、息つく間もなくオルタナティブに動転していく。横ノリの気だるげなダンスナンバー#3「あはあは」。耳に残るメロディからニヒルで飄々とした佇まいが楽曲からも伝わってくる一曲。終盤になるにつれ一筋縄ではいかないサウンドになっていくのも魅力的。高速ロックサウンドで突っ走る150秒の#4「キスマーク」。タイトルから目を引く#5「まさかマザーユニバース」は、色気たっぷりのイントロ~Aメロで期待感を高めつつ、「まさかここはマザーユニバース」でダンサブルなリフで爆発!ポップでニヒルなダンスロックが楽しめる。ビートもしっかりと入っているのだが、ギターだけでも踊らせようという気概を感じる完璧なリフである。切れ味鋭いカッティングが目を引くアップテンポな#6「らぶふらくしょん」。メロディも素晴らしく、J-POP的なエッセンスからライブ映えするエッセンスまで盛り込み、キャッチーで楽しく、口ずさみたくなるメロディ。2Aメロの暴れまわるベースも。

重く歪んだギターがグランジ的で格好良い#7「いっそflyaway」。スラッブベースを中心にファンキーに展開しつつ、ポリリズムなボーカルが心を揺さぶる#8「なに食べ」。ガレージロック的な趣きも見せつつキャッチーなロックサウンドで魅せる#9「バイバイ未来エンドロール」。バキバキに加工されたボーカルも良い味を出している。打って変わってストレートでエモーショナルなロックバラード#10「六等星の丘~we are believer~」。この曲があるのとないのとではまたこのアルバムの印象も変わってくるだろう。J-POPの影響も公言しているハシグチのメロディセンスを存分に楽しめる楽曲でもある。祝祭のような雰囲気すらある突き抜けた明るい楽曲、#11「パステル」。ここまであまり見られなかった空間系のエフェクターを駆使したカラフルなギターサウンドが楽しい。最後はギターサウンドを中軸に据えたサイケデリックで壮大な「名前はまだ無い」で締め。

音源のすばらしさに加え、鮮烈なライブパフォーマンスで今メキメキと知名度を上げている彼。The Super Ballとコラボしアニメ「ナンバカ」の主題歌を担当するなど、今最も勢いのあるアーティストの一人と言っても過言ではない。2017年要注目、ハシグチカナデリヤ。是非、手に取ってみてほしい。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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