disc reviewよく語る声、乱数的喧騒にも明朗に響く

tomohiro

ccmmgrrejuvenated half-face

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アルバムタイトルは「チーチーモモンガー」と読むらしい。今でこそ聞けば我々のよく知る”残響レコードらしさ”を押さえた女性ボーカル変拍子轟音バンドだね、とでも言ってしまえるのだが。なんとリリースは2006年である。2006年が一体どういう年かというと、今や残響レコード出身の代表格の看板を背負うcinema staffのメンバーはまだ大学に入りたてだし、mudy on the 昨晩も結成したばかり、残響レコードを抜けてはいるが、当時はまだ残響に所属していた9mm Parabellum Bulletが『Phantomine』をリリースした年でもある。これらを踏まえれば、彼女たちがいかに時代の先を行っていたバンドか伝わるだろうか。同年代に所属していたバンドに、naanルルルapneatexas pandaaなどが挙げられ、これらのバンドとともに、残響レコード興隆期を盛り立てていたバンドである。

 

明朗によく通る女性ボーカルは、メロディにもしっかり芯があり、バックで行われる破天荒な演奏すらもすらりと聞き流すことができる包容力を持つ。クランチギターと轟音系ギターの二本立てに、音数が凄まじい連打系ドラムを中心に構成される楽曲は、一拍減り、一拍足しを駆使した脳みそ搔きまわし系の変拍子と、大胆なポリリズム。漠然と描かれる抽象的で文学性も匂わせる歌詞と、合わさってみれば今となっての残響のお家芸だが、当時これらの要素を詰め込んだバンドが既に流通していたのはなかなかに胸が熱い。

#1 “cause&effect”はイントロのカッティングリフがいわゆる”実は変拍子系”ですっと耳に馴染む。そこから幾多の展開の変遷を繰り返すが、Aメロ裏で際どいリズム感を突く粘りのあるフレーズを続けるベースや、エモーショナルなサビメロが印象的だ。そして、アウトロではロングトーンを引っ張ったまま、イントロフレーズに急に回帰する、王道ながらも完成度の高い楽曲だ。続く#2 “relative downer”は、3拍子のワルツ的リズムを、単音フレーズの絡みで上手く味付けした楽曲。後半の怒涛の展開は要チェックだ。#4 “Everest”はnaan的雰囲気も感じるアンビエントイントロから、空気感の尾を引いたまま5拍子と、12/8、20/8でただの8拍子4小節の歌メロをスリリングに味付けするリズム隊が癖になる。#4 “Antimony”は開放弦と不協和多用系の単音フレーズと解決しないモヤモヤ系進行が機械的なフィーリングを与える楽曲で、同レーベルからのちにリリースするCOgeNdshEの香りが感じ取れる。#5 “Herring Roe”まで含めて、一般的なJPOP尺である4分程度に曲尺を収めていたが、残る6曲は総勢9分越えの組曲となっていて、そのあたりの攻め方にも好感が持てる。アルバムとしてはきっちり30分。

 

前述のCOgeNdshEや、chou chou merged syrupsmiimiといった歌謡メロ系のよく語る残響女性ボーカルバンドのレーベル的原点に近い位置付けにいたrejuvenated half-face。現行の歌モノポストロックバンドが脱ぎ捨ててしまった、荒削りで衝動的な空気をまとった彼女たち、今こそ再評価の時ではないだろうか?

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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