disc review「あ、音楽っていいな。」を与えてくれる極上のポップスアルバム

shijun

アイネ クライネ リヒトムジークContrary Parade

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大阪出身のひとりユニット(?)、Contrary Paradeの2013年リリースのアルバム。現在は活動拠点は東京である。もともとはバントとして活動していたが、2012年よりピアノボーカルたなかまゆのみを正規メンバーとしての活動に移行している。公式HPのプロフィール欄には『あなたも聴けばきっとこう言うはず。「あ、ふつうにいい。」』と書かれている。これは少しの謙遜と共に、普遍的な、しかし良質なポップスを作り上げていることに対する自負でもあるだろう。

#1「5線譜のうた」では自身の歌う意味を陰のある描写を含ませつつも前向きに歌い上げる一曲。サビでは優しくもきらきらした言葉遣いと、たなかまゆの透明感がありつつも人間味溢れる歌声と、暖かみのあるパーカッションとベースとが合わさって何とも素晴らしい幸福感をもたらすしてくれる。どんどん盛り上がるメロディラインが聴き手に自然に元気と笑顔を与える#2「エイプリルシャワー」。トライバルなメロウさを纏った#3「空想クロール」。透き通ったボーカルがまた優しい。シティ感溢れるちょっと大人なアレンジがお洒落な#4「マーガレット」。音数少なめのアレンジの中で電話やカメラなどの効果音が随所に使われつつも、普遍的なポップスとして仕上がっている#5「アンドロイド」。#6「トリルトレモロ」はミドルテンポかつ切なく瑞々しいメロディで涙腺を刺激してくる。単調にしかし確実にリズムを刻むギターが心地よく、単調さとドラマ性とを共存させたまるでロードムービーの様なアレンジが気持ちよい#7「虹色」。ジャジーな変則的なリズムと凝った展開が耳を引くもメロディの盛り上がりがしっかりしており、聴きごたえと聴きやすさが共存している#8「プリズミカル」。少しクラムボンっぽさもあるか。優雅なホーンセクションに口ずさむような軽快なメロディが、カジヒデキや堂島孝平などの渋谷系以降のシティポップっぽさを感じさせる#9「プライマリー」。サビ前の落ちる様なメロディや、サビのワウの利いたカッティングにもそれっぽさがありニヤニヤしてしまう。#10「マーチ」で締めるのも正解という感じで、アルバムの最後に楽しげな余韻が残るのが良い。

これぞポップス、という聴き味のアルバムである。マニアックなアレンジなどは少ないものの、しっかりとした良質なアレンジで丁寧に仕上げられている。そして表現力豊かなたなかまゆの歌声と、それを十二分に生かしたメロディセンス。陰と陽とのバランスが2:8ぐらいなのもちょうどいい。最先端の音楽ではないが、たまに帰りたくなる、僕らの帰れる音楽なのではないだろうか。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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