disc review憂いと辟易を含んだ低体温ダンスポップに、台北が沸く。

tomohiro

草東沒有派對草東沒有派對(No Party For Cao Dong)

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2015年、台湾インディーシーンを大きく沸かせたバンド、草東沒有派對(No Party For Cao Dong)。正式な音源は未だリリースされていないようであり、今回はYoutubeやiNDIEVOX等で聴けるものや、投げ銭制で販売されている曲をいくつかピックアップしてのレビューとなる。読みは「ツァオトンメイヨパイトゥイ」で、意味は英訳の通り、「草東(ツァオトン)にはパーティーがない」とのこと。陽明山草東街という文字列が見受けられたので、おそらく台湾の地名なのだろう。曲名の英訳はそれっぽいものを当てただけなので参考程度に。

台北芸大の学生によって構成されているこのバンド、台北の600人規模のライブハウスを埋めるほどの人気を誇るらしく、これは普段から酒を飲む風習のないことからも想像できる通り、ライブハウス文化の浸透が十分でない台湾においては大変な健闘である。

 

台湾のバンドといえば、透明雑誌を思い浮かべる人も多いかとは思う。透明雑誌がそうであったように、台湾のバンドマンに日本のバンドを愛聴している人間は多いと聞く。そんな風に日本の音楽からの影響といった点から見て、台湾版NUMBER GIRLと称された透明雑誌に習うならば、彼ら草東沒有派對は台湾版YMOといったところだろうか。落ち着きのあるミドルテンポのリズムを中心としながら、低めの男性ボーカルが物憂げに歌う様子や、フレージングの中華感(まぁ当然なのだが)にはYMOのようなサイケデリックでワールドワイドな空気感を感じる。また、台湾人の気性には、シューゲイザー、ポストロックといった、若干の湿っぽさや緊張感をはらんだ音楽が好まれるらしく、彼らもその例外ではなく、台湾から生まれ出でるバンドはどこかクールな一面を持ち合わせている。

 

郷愁を感じさせるかと憂いを帯びたフレーズと、ダンサブルでキャッチーなメインフレーズの攻防が繰り返される”我先矛盾”は、中盤の各楽器のポストロックフィーリングな掛け合いが印象的だ。

一方2分弱のショートチューン、”醜”はライブで導入的に用いられているのだろうか?2分に彼らの魅力が詰め込まれており、クレバーな楽曲だ。

“大風吹”はダンサブルというよりはリラクゼーショナルな楽曲。Aメロに挿入されるリードギターのフレーズや、男女混声のメロディラインが気持ちいい。後半で畳み掛けるエモ的構成も胸が熱くなる。

YMOというのももちろんだが、相対性理論のような透明感のある雰囲気も纏った不思議なバンドだ。台湾の若者を踊らせるビートを、感じてみてはいかがだろうか?

今後正式な音源がリリースされたら改めて触れたいバンドだ。

また、今回の記事を書くにあたって、非常に参考になったページがあったので、紹介しておく。これを読んで台湾インディーをより深く知ろう!

 

【REAL Asian Music Report】第2回 〈台北月見ル君想フ〉店主・寺尾ブッタに訊く、台湾インディー・シーンのいま

 

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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