disc reviewひび割れた地平線を見据える碧眼の歩兵

tomohiro

WildlifeLa Dispute

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La quieteではないので気をつけて。

初期リアルスクリーモ的な焦燥感に満ち溢れたスポークンワードボーカルと、どこか乾いた哀愁を奏でるギターが印象的なUS激情5人組、La Disputeの2ndフルアルバム。激情と呼ばれるジャンルは、日本で言うところのenvy, heaven in her arms, killieといった、ポストハードコアやカオティックハードコアにドラマチックで悲劇的な展開を盛り込み、悲痛なスクリームが歌い上げるといった、ある種芝居がかったジャンルであり、Suis La LuneVia Fondo等の北欧激情も、北欧という土壌ゆえに、前述の日本のバンドと同じく、メロディアスで泣きメロ過多な湿っぽいスタイルである。

 

 

 

一方で、今回紹介するLa DisputeをはじめとしてLOMA PRIETAなどのUS激情は、少し趣を異にする。ギターのサウンドはカラカラに乾いており、奏でられるフレーズも、号泣せんばかりの悲痛さというよりは、どこか俯瞰的でドライな匂いを漂わせる。自分が悲劇の主人公である、というよりは悲劇を物語ると言った表現の方が適切だろうか。そういった意味では、激情という大きなくくりにおいて、彼らは異端者であると言えるかもしれない。

 

この違いをどう解釈するのかは難しいところだが、個人的にはUSとUKの違いのようなものではないかという認識だ。UKのバンドを大雑把に評価する際によく用いられるような表現は、線が細い、メロウ、湿っぽい、ナヨナヨしている、といった繊細であったり、文学的な要素が多い。それに対し、USではカントリーの泥臭さがあったり、グランジのシーンが生まれたり、どこかドライで粗暴な印象を受ける。大陸の大半を占め、非常に雑多な価値観の混在するアメリカという国では、必然と大衆の価値観に受け入れられる音楽はドライなものが多いのかもしれない。

 

さて、La Disputeであるが、焦燥を煽るたどたどしいスポークンワードと、バックで繰り広げられるクールな演奏がある種のミスマッチを引き起こしており、非常に味わい深い。こういったボーカルワークは激情にありそうでなかったもので、非常に渋くてかっこいい。初期Thursdayのような、うろんなボーカルと熱情的な演奏との美しいバランス感をこのバンドでも感じられるだろう。おすすめしたいトラックは#1, #2, #4, #7といったところ。アダルトな雰囲気も漂わせるUS激情を観よ!

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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