disc reviewネオ・シューゲイザーの夜明けを見据える翠の双眸

tomohiro

Road EyesAmusement Parks On Fire

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2006年にサマーソニックで来日を果たした、イギリスのシューゲイザー通過型ギターロックバンド、Amusement Parks On Fireが2010年にリリースした3rdアルバム。メインストリーム感に溢れるクリアでモダンなバンドサウンドながら、シューゲイザー的なフィードバックや深くかかったリバーブを用いることで、ストレートなギターロックのサウンドに奥行きとみずみずしい透明感を加味することに成功している。シューゲイザーというとどこかアングラなジャンルとして捉えがちだと思うのだが、彼らは実にうまくシューゲイザーの中の爽快感溢れる部分を抜き出し、ストリングスなどのバックトラックを組み合わせることで、アングラな方法論をうまくポップかつクールにまとめあげていると言える。

Vo/Gt.のMichaelのソロプロジェクトとしてスタートしたこのバンド。マルチプレイヤーであったMichaelと、のちにギターとして加入することになる友人のDanielの二人の手によって、1stアルバム”Amusement Parks On Fire”は作り出され、PortisheadのGeoffのレーベルであるINVADA Recordsからリリースされた。

 

1stアルバムにして、すでに彼らの方向性のおおよそが固まっており、当時からシューゲイザーに影響を受けた、どこか焦がされるような甘酸っぱいサウンドを展開していたことがわかる。とはいえこの頃はMichaelがすべての楽器を演奏していたこともあり、そのカラーは単一的というか、目覚ましいほどの何かを持ち合わせている気配を感じ難かったかもしれない。そこからメンバーを集め、バンドとして送り出した2nd、”Out of the Angels”では、一旦その方向性をシューゲイザーへとかっちりシフトさせており、シューゲイザーのファンにはこのアルバムが一番響くものがあるかもしれない。2006年のサマーソニックでの来日も合わせて、多くのシューゲイザーファンがこの作品の鼻がツンとする蒼さに酔ったようだ。

 

そしてここから4年の歳月を経てリリースされた3rdは、冒頭でも述べたように、1stの頃に感じた、影響としてのシューゲイザーに轟音要素はとどめ、ギターロッキンな面を押し出してきており、もっともメジャー感のある仕上がりと言えるかもしれない。2ndが予想以上にシューゲイザーを地で行っていたため、その延長線を期待していたファンがどういった感想を抱いたかは各々の想像に任せるが、ギターロック、歌モノ、オルタナといったしなやかながらも芯の強いジャンルの要素を取り入れることで、名実ともに”ネオ・シューゲイザー”と呼ぶふさわしい作品に仕上がっているのではないかと思う。アングラシーンに侵食するシューゲブラックやBlackgaze、Doomgazeと呼ばれるような流れとは異なるところで、こうしてシューゲイザーが表現されているという現在のシーン、広い視野を持って見渡してみると非常に面白いモノに見えてくるのではないだろうか?

 

 

イントロからこれでもかと重ねられるコーラスの美しさ、まさに新世代のシューゲイザーの夜明けという感じがしないだろうか?

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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