disc reviewオーストラリアから激情の中心地へと降らす焼夷弾の雨

tomohiro

He Who Swallowed the BloomBlind Girls

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豪州のゴールドコースト発の絶品エモヴァイオレンス、Blind Girlsの3作目となる音源。初作は既にフィジカルは完売しているようであり、現在はbandcampからフリーダウンロードが可能だ。また、それ以降の今作を含む2作も、name your priceとレコードでの販売との2面で展開されており、リスナーの再生環境によって好きな媒体を選べるのが好印象だ。

11/2-11/8にかけて、東京の若手エモヴァイオレンス最右翼sans visageとともに来日ツアーで各地を回るため、福島、東京、静岡、名古屋、大阪の激情フリークは、ぜひそれまでにbandcampで予習を済ませた上で、ライブへと足を運び、盤で音源を手に入れて欲しい。ツアーの詳細はこちらから飛んでいただくのがわかりやすいかと思うが、初日東京でのGhostlateFredelicaを始めとして、大阪編ではドラムのスクリームが印象的なcofunや岡山からのエモリバイバルインフルエンスな叙情系flesco、名古屋編では激音ジャンク・ハードコアNarrと岐阜からのcabsインフルエンステクニカルスリーピースハードコアquiquiなど、各イベントに充実の若手激情、ポストハードコアが集結する豪華さだ。また、ラスト2日間の東京ではblue friend(最新作のレビューはこちら)やAstheniakillieのBa.吉武率いるThis Time We Will Not Promise And Forgiveなどに加え、suis la lune(レビューはこちら)のVo/Gt.のプロジェクト、Years Passingも出演が決定しており、実に非の打ちどころのない面々である。

 

さて、このような盤石の体制でツアーを行うBlind Girlsだが、時として爽やかな切なさを感じさせるような北欧激情譲りのフレーズワークに、よく歪んだ悲痛なボーカルワーク、めちゃくちゃに叩きまくるドラムが平均2分程度の楽曲に詰め込まれており、3作目にしてもその初期衝動感は一切衰えを見せず、むしろ鋭さを増すばかりだ。これほどに完成されたエモヴァイオレンスが、オーストラリアから突如出現したことには正直驚きを隠しきれない。バンドは続けるほどに、メンバーにも安定感は出てくるし、少しづつコンポーザー、プレイヤーの聴く音楽の変化がバンドに流入し、変化していくのが常だ。(それが良い事か悪い事かはここで論ずる事ではないと思うので、言及しないが。)しかし、彼らは最初の音源から2年経っても、一切の手抜き無しの血管ブチ切レ続きのエネルギッシュな楽曲をドロップし続けており、そのバイタリティには感服だ。また、音源のミックス、マスタリングはDeafheavenCalculator等を手がけるJack Shirlyの手によるもので、衝動感に溢れた荒さを残しながらもクリアに聞こえてくる各パートのバランス感にはうなるばかりだ。

 

suis la luneVia FondoAmaltheaなどの北欧激情をはじめとして、sans visagekijibirth等の日本の若手エモヴァイオレンスのリスナーには間違いなくクリティカルなバンドだ。このレビューをもし読んでくれたのなら、是非、音源を聴いた上でライブに臨んで欲しい。彼らの生の叫びを聴くのが今から楽しみだ。

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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