disc review親しみやすさの裏に隠されたポップセンスの刃

shijun

坂巻通りTHE BOY MEETS GIRLS

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名古屋のポップバンド、THE BOY MEETS GIRLSの1stミニアルバム。「出れんの!?サマソニ!?」を勝ち抜きSUMMER SONIC 2015に出演するなど、少しずつ名古屋外でも知名度を伸ばしつつあるバンドである。「笑って泣けるノスタルジックポップバンド」を自称し、親しみやすくちょっぴり切ないギターロックを奏でている。名古屋のインディーズシーンの中でも頭一つ抜けたポップセンスを持っていると思う。

始まりを予感させる優雅で広大なイントロを持つ#1「Sayonara Landscape」でアルバムは幕を開ける。明快で親しみやすい歌詞に、どこか人間臭い懐かしさを纏ったメロディーがすっと頭に入ってくる。#2「真夜中のサーカス」はこの手のバンドとしては珍しく緊張感を感じさせるハイテンポな楽曲。親しみやすいポップさは守りつつも、激しく掻き鳴らされるギターやダンサブルに動きまくるベースに自然と体を揺れらしたくなる。#3「やさしい金髪」はライブを意識したと思われるダンサブルな楽曲。キラーフレーズをこれでもかと連呼し、半強制的に頭に植えつけて来るサビもニクい。さらには掛け合いまで入り、やりすぎじゃないかと思うほどのキャッチーさである。#4「雨の模様」はお洒落なギターのカッティングに横ノリ気味のビートと、彼らなりのシティポップになっている。他の楽曲にも増してノスタルジー成分の強いメロディからは、最近の流行シティポップの影響と言うよりは、むしろその源流からの影響を彼らなりの親しみやすさでパッケージングしたような印象を感じる。#5「どこでもドア」はストレートなバラード。少しずつエモーショナルさを増す構成はスタンダードではあるが、細かな気配りが随所に為されておりやはり良い。彼らの「聴かせる」サイドのセンスが光った楽曲である。

音楽性だけで言えば、幾百と居るインディーズバンドにありがちなポップバンドかもしれない。だが彼らの楽曲に埋め込まれた細かな仕掛け、曲展開の美は有象無象のそこら辺のバンドとは明らかに違っている。#3のようなキャッチーさ全開の楽曲から、#4のようなちょっとマニアックな要素を含む楽曲まで、全てを同じ舞台で、全てを自分達のものとして表現する技術があること、それが全てを物語っているだろう。そんな彼らだが、ここ最近のリリースは明らかに宣伝、パッケージングににお金をかけており、これからスターダムを駆け上がっていく準備を万全に整えようとしている。音楽性にもさらに広がりを持たせつつ、すでにこのアルバムで確立した自分たちの姿に組み入れている様だ。これから各所で名前を聞くことに為るであろうバンドなのは間違いない。要注目。

 

2nd mini albumより。親しみやすさはそのままに、シンセまで導入しさらにお洒落に。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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