disc review崩落する極東のバビロンを睥睨する、鈍角な尖兵

tomohiro

balancethe north end

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彼らはレベル・ミュージックを歌う。レベル・ミュージックとは「反抗の音楽」と訳され、レゲエとともにレベル・ミュージックは切り離せないモノとして発展してきた。黒人が総人口の90%を占めていたジャマイカでは、植民地主義や物質主義への疎外感、並びに抵抗がレゲエという音楽に乗せられ、表現されてきた。それは自らを戦士になぞらえ、フォークロア的に抵抗を描写する、原理主義の要素も含んだラスタファリ運動に代表される。科学に溺れ、資本主義に拘束される現代日本をバビロニアのようだと揶揄し、歌を武器に抵抗する彼らも現代日本におけるラスタファリアンであると言えるだろう。

彼らはレベル・ミュージックを表現する。形として表すならば、それはポストハードコアの領域に収めることも可能かもしれない。しかし、そこに内包され、発露するのは現代の社会、情勢に対する反骨心が剥き出しになった主張の歌であり、単に、ハードコア、もしくはパンクとして片付けることはできない。あくまでもミドル〜スロテンポの硬質のビートを奏で続けるドラムに、正体の掴めないダブ・フレーズを重ねるベース。海抜0m以上の空間を支配する全方位包囲的ギター。反核、反マスメディア、反資本。「持つ」ことへの批判を演説し続けるボーカルの4つ柱によって編み上げられるthe north endは、自身を根幹とし自身が全てをなすthe north endというパーティを構成する。のらりくらりと直撃をかわすようにして、僕らの周囲に打ち込まれ続ける言葉という杭の数々は、不思議な存在感を示し、一つの違和感として留まり続け、僕らを拘束する。

レベル・ミュージックという手段を行使するうえで、ダブ、レゲエを方法として用いることはとても自然で原理的なことであるが、このような他ジャンルとの融合の仕方は誰が想像できたであろうか。2007年の前作、”幻想平和にさよなら – goodbye to illusion peace – “の頃はまだ、盟友であるheaven in her armsと比肩するような、激情的でハードコアとしての要素の強い楽曲が目立ち、ダブ・バンドと言うにはふさわしくなかったように思うが、今作に至るまでの8年の間に、彼らは見事に(ハードコア、ポストロックをまとった)ダブ・レゲエバンドへと深化した。8年を経ての3曲。この3曲の重さは、耳にすれば分かるはずだ。

また、7″として付属するダブアレンジを施された2曲も、the north endがダブ・レゲエを標榜していることを否が応でも認めさせられる、造詣の深い作品であり、このバンドの別の側面をのぞくことができるいいスパイスとなっている。

リリースはPLAY DEAD SEASON、Ballons、3cm tourなど日本のポストハードコア、ポストロック、エモに上質な作品を落とし込むSAY HELLO TO NEVERより。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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