disc review滴る血、襤褸をまとった叙情的惨劇

tomohiro

LacunaCaravels

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アメリカはラスベガス出身のポストハードコア、スクリーモバンドCaravelsのデビューフルレングスとなる作品。エモ、ポストハードコアの名門、Topshelf Recordsからの満を持してのリリースである。レーベルメイトであるThe Saddest Landscapeの叙情性、切迫感やWe Were Skeltonsのマスロッキンさなど、インフルエンスを十分に感じさせながらも、それだけにとどまらず、Drive Like Jehuのような”デカイ声を出そうとしたら歪んだ”感のあるボーカルワークが男臭く、胸を熱くさせる。

このバンドやNative、Frameworksなんかの漂わせている、ポストハードコア黎明期のリアルスクリーモ感のある空気感は、Pianos Become The TeethTouché Amoréなど、より美麗で現代的なスクリーモにその方向性を寄せ、時代の先端を行く感覚を重視したグループと並べて、新世代型スクリーモの双璧を為していると言っても過言ではないと思う。

 

どしょっぱから生き血をすするかのような悲壮感に満ち溢れたアルペジオとともに幕を開ける#1″Lacuna”に始まり、空中ブランコのようなスリリングなギターの絡みが印象的な#3″Having Had & Lost Some Infinite Thing”、インディーな匂いを感じさせるナードチューン#5″Hundred Years”を経過し、叙情性が強く、北欧型の激情系にも通じる#10″Dog Days”で幕を降ろすまで、息つくことなく乱暴に叫び続けるボーカルワークは、ボロをまとった浮浪者の魂の叫びのようであり、粗暴で悲しい。願い続け、それでも掴めず、自らの境遇を呪うことしかできないその叫びは、しかし、とても美しい。

この悲痛なエモーショナルさは、日本で独自に発達を遂げたenvy、killie、heaven in her armsのような日本型の激情系ハードコアとも十二分にリンクする力を持っており、我々の感性に訴えかけてくるものがある。

 

Octavesとのスプリットを最後に、解散してしまっており、惜しまれる。

Lacuna

 

Having Had & Lost Some Infinite Thing

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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