disc reviewインテリジェンスとオリエンタルの飽和的融合

tomohiro

DisclosureThe HAARP Machine

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今やdjent、テクニカルデスメタル界隈で知らぬものはいないと言っても過言ではないほどにまで、その勢力を拡大している、優良レーベルSumerian Recordsからのリリース。(こぼれ話になるが、Sumerian Recordsは、かつてAnimals As LeadersのギターTosin Abasiが所属していた、メタルコアバンドRefluxのボーカルが設立したレーベルである。)

このレーベルの特徴として、所属バンド達のセンスフルさが挙げられる。djentの名を大きく広めるに貢献したPeripheryや、Born Of Osiris、デスコアに独自のテイストを取り込んだ、Veil Of MayaAfter The Burialなど、その若く感性に満ち溢れた音楽たちは、Sumerian Coreという一つのブランドを築き上げた。最近ではテクニカルインストゥルメンタルバンドChonや、Saosinのボーカルが舵をとるスクリーモバンドCirca Surviveなど、より幅広い層にアピールしてくるリリースを行い、ますますその勢いはとどまるところを知らない。

 

そんなSumerian Recordsから一枚のみ作品をリリースしたテクニカルデスメタルバンド The HAARP Machine。正統派スメリアンとでも呼べるかのような、グロウル、シャウトとハイなクリーントーンを使いこなすボーカルに、シタールや琴、など、中東要素を大胆かつメロディアスに取り入れられた楽曲が融合することで、レーベルの中でもオリジナリティを確立している。MyrathOrphaned Landほど、モロ中東メタルではなく、あくまでもスタイリッシュにオリエンタルな雰囲気を取り入れているところは、とっつきやすく高評価だ。また、歌詞はイラク戦争やアルカイダなど、ポリティカルな話題を絡めたものとなっており、インテリジェントでスマート。

 

シタールの演奏とともになだれ込むようにして幕を開ける#1 “Esoteric Agenda”、djentな雰囲気も感じさせつつ、変拍子で縦横無尽に駆け巡る、#3 “Pleiadian Keys”、タイトルトラックにもなっているミドルテンポ、クリーンボーカルで物憂げに歌い上げられる#5 “Diclosure”、まさに”必殺”な重厚リフに始まり、メランコリックなフレーズもその冷静さを加速させる、6分越えの大曲、#8 “Machine Over”など、初のリリースにして、その楽曲から漂う完成度は尋常ではなく、バンドを総じてプロデュースし、自身もギターのみならず、シタール、琴も操るコンポーザー、Al Mu’minのメタルのみにとどまらない広く深い教養を感じる。

 

テクニカルデスメタル特有の、息もつかせないような高密度のギターワークは必聴であり、要所要所に見え隠れる各パートのフレージングも白眉だ。是非ギタリスト、ベーシスト、ドラマー諸兄にも聞き込んでもらいたいアルバムである。

Pleiadian Keys

 

Machine Over

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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