disc reviewcllctv. 企画 Internal Meeting vol.1 ライブレポート

tomohiro

 グッドバイモカ

 

 

今回のイベントには、それぞれに語るに足るつながりがあって、グッドバイモカは自分にとってずっとライバルのような(MCでGt/Vo. 池田も語っていたように)、そんな存在のバンドでした。それゆえに、自分の主戦場に彼らを招き入れることは長年若干の抵抗があったのですが、ここ数年の中でもはやそういったプレイヤー感情も薄れてきて、純粋につなぐべきつながりをつながなきゃという気持ちも芽生え、こうして輪の中に加わってもらった形となります。

彼らは出会った2012年ごろから一貫して彼らの思うポップスの追求に尽力しており、それはここ数年とても豊かな形で花開いてきたように感じます。その結果となる今のグッドバイモカは、僕らの中に普遍的に書き込まれている様々なノスタルジーの姿を、確かな実感とともに届けるような「近さ」があって、これから先より一層、人を問わず聞かれていく音楽になっていくのではないかと、そう思います。

 

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この日最初の曲であった”ノータイトルサマーポップス”は、夏のノスタルジーを思い起こさせる一曲。駆け抜けるギター、ストレートなメロディに抜けるような夏の匂いがこもっていて、その眩しさに少しクラっとくるような空の高さを感じる。同名の小説に寄せた、”プラネタリウムに星がない”とそれに続く”anne”は夜の香りを感じさせる2曲。特に”anne”は深いリバーブに彩られたギターが描き出す濃紺の夜の景色が儚く、彼らの直近の音楽を大きく方向付けた名曲だと思っている。楽曲全体でコードワーク的にはほぼ一つの主題を持ち回りながらもその色付けで形の違ったメロディを描き出し、一貫とした空気の中にドラマを組み立てていく。語りかける混声を切り裂くようなギターが鳴ると、空間の形がそれに彩られ、深い夜の空が一気にカーテンを引いたように視界が埋まる。午前2時、部屋と空、都会の喧騒、その全てに散りばめられる切なさを紡いでいくようにして描かれる一つの歌がそこにあり、それは染み込むようにして聴く人の元に届いていく、そんな感覚がありました。

これに続くのは、直近、スタジオの中で生まれたという新曲、”ニュータウン”。すでに彼らの武器としてものにしつつある、オルガンライクなキーボードと揺れるギター、サニーデイ・サービスの恩寵の元にあるノスタルジーは、それを持って平成から令和への橋渡しの時期を描き出す、来たる「あの頃」への音楽の到来を感じ、そこに抜群の信頼を持って迎えられる安心感がある楽曲だったと思います。

 

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彼ら自身、東京への活動拠点の移動もあり不規則な活動が続いた数年であったわけですが、そこから次へと進むべく動きを取り始めていて、見えているものがあるだけに、今の彼らは、シンプルに落とし込まれておりながらも力を感じます。待望の新譜のアナウンスをそれとなく流し、最後の曲は”ユーミン”。アイデンティティとして持ち続けている昭和から平成のポップスへの憧憬を、彼らなりのルールを持って描き出す楽曲で、懐古主義とくくるものではない今のエッセンスが香ります。

来るべきノスタルジーに向けて、それを真摯に描き出す彼らの30分は軽やかな穏やかさをまとってそこにあったように思いました。

 

 セットリスト


  1. ノータイトルサマーポップス
  2. プラネタリウムに星がない
  3. anne
  4. ニュータウン
  5. ユーミン

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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