disc reviewcllctv. 企画 bookshelf vol.5 ライブレポート

tomohiro

colormal

まだ明るいうちに始まったこのイベントも気づけば日はとっぷりと暮れ、有限の時間の終わりを感じさせる。最後のバンドは大阪からcolormal。彼の生み出した音楽については今更語るべくもないだろうか。このバンドを観に来るべく、足を運んだ観客の数がそれを顕著に物語っていたと言えるだろう。(これまで何度も県外のバンドを呼んで企画をしてきたわけだけど、今のところ彼らより集客して来たバンドは知らない。しかも活動3回目のライブで!一体何人の親を人質にしてるんだ!)
僕が初めて見たライブはcolormalのバンドとしての活動の最初の日で、その日はまだ彼らはスリーピース編成だった。なので、今回初めてリードギターを加えた編成で見ることになったのだが、そもそもギター数本の使用を前提にしていた音源『merkmal』が彼の名刺であった故に、その再現性が担保された安定感は素晴らしいものがあった。

“東京”、”花に嵐”とアルバム収録曲から始まった今回の演奏。初めてあのアルバムを聴いた時の瑞々しい感情が、ライブを通じてまた味わえることの贅沢さを噛みしめる内容である。原曲のフレーズをなぞりながらも、所々ライブ用にアレンジされているキメや、各パートの自由なフレージングが、あくまでも一人の集大成であったcolormalの楽曲を「バンドの楽曲」へと押し上げる。

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続く”ゆらゆら”は疾走感のあるドラムフレーズや大きく音程の幅を取らないメロディが焦燥感を煽るライブチューン。シンプルで一貫してバンドでのまとまりが感じられるこの楽曲は、バンドで演奏を始めたことで生まれた楽曲のうちの一つだろう。こうして、宅録から始まった音楽はどんどん多くの人の血が通った、複雑な生き物になっていく。

今や彼らの代表曲となった”大きな怪獣”。ギターが2本になった一番の恩恵を受けているのはこの曲なのではないだろうか。なんせイントロの「「「ベィーン」」」が再現されている爽快感である。
そして続く”優しい幽霊”。楽曲としての主題を”大きな怪獣”と共有する、いわばスターシステムな音楽である。こういったメタ的要素を多分に含んだ作曲は彼の得意とするスタイルであり、ライブの中でただの楽曲のつなぎ合わせでないストーリーを作り上げることに一役買っている。

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“鎹”は愛嬌あるリコーダーの合奏に思わず破顔してしまうが、その実、楽曲に込められたストーリーと感傷は人一倍強い、彼なりの屈折したラブソングだ。彼の楽曲は緻密に聴こえながらも、実はすごくシンプルであることがライブを見るとわかる。それゆえにそこに込めるべき感情を押し出した歌メロがよく通るし、作り込まれているように見えて結構ライブ志向なのだ。

そして、彼らのライブを見ていて感じるのは不思議な一体感と親しみ。ステージと観客が精神的に大事な部分を共有しているようで、観せる側、観せられるような距離感を感じ取りにくいのだ。それは、彼が描いてきた繊細な感性を音楽として伝えていくこと、その伝わりやすさをメンバーそれぞれが希求しながら、演奏を積み重ねて来た成果なのではないだろうか。(あとは関西人のトーク力か。)まだ、始まったばかりのcolormalというバンド、これから先もたくさんの出会いがあることを期待させる。この日一日の素晴らしい時間の共有、それをまとめ上げる最後のアンコールは、大名曲”大きな怪獣”で。

 

1. 東京
2. 花に嵐
3. ゆらゆら
4. 大きな怪獣
5. 優しい幽霊
6. 鎹

en. 大きな怪獣

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WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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