disc reviewcllctv.企画 Bookshelf vol.3

tomohiro

Gue

すでにここまでで40分×3バンド、120分の大熱演。空調も回りきらないほどに場内は暑く、スーベニア、Primacasata、headacheと経て否応無しに場の期待感は高まって来た。この期待を背負って、目前に立つのは、京都から、Gue。活動の休止や、メンバーチェンジや脱退等いくつもの壁を乗り越え、力強く、いつも歌を届けてくれる。今回のライブも、何の不安要素も与えない、充実感が彼らからは溢れている。

空間を支配するスペーシーなギターをバックに、厳かに、語りかけるようにして歌い始めたのは、『Luminous』のキーとなる、『世界には響かない』。「いつかまたどこかで、」の言葉には、タイトルのネガティブな言葉のイメージとは裏腹な、希望が込められている。このタイトルは、(が、それをやめはしない)という決意をより深く刻み込むための逆説的な宣言であると僕は思う。「君の声も、高鳴る音も、かけがえのない真実だった」と結ぶこの歌は、高波を幾度も乗り越えて来た彼らだからこそ、より重く響く船出の歌だ。そんな船出を盛大に祝うファンファーレのような『Hello my anthem』。まっすぐに希望を歌うことをあえて避けて来たように思えた彼らの中でも、ずっとまっすぐで、メロディを知らなくとも声を合わせ歌える、とても見晴らしの良い歌。

独白の『空論』、そして『ダブル』と噛みしめる選曲が続く。僕は『独白』という歌がすごく好きで、それは短いながらもGt/Vo. 谷の音楽への憧憬、今のシーンやあり方への気持ち、そういった感情がとても強く現れているように聞こえるからだ。(昔は『80年心臓』という曲名だった気がする、違ったかな。)確固たる思いを持って音楽に取り組む、そんな姿勢を強く感じるのは『ダブル』も同じ。楽曲自体は長くともそこに込められる文章はそれほど多くない。それだけ言葉の重みは強く、彼らも振り絞るようにして演奏する、そんな姿が印象的だ。

そして春風が駆け抜けるように暖色の爽快感を伴い始まる『ホワイトピーク』に熱量は上がって行くまま。最後の選曲は今や彼らの代名詞的な存在感を放つ白眉な楽曲、『フィールド』だ。インディーなイントロでみんなの熱量を期待感の殻へと閉じ込め、サビ、その後のまさに爆音なアウトロ、ギターソロで一気に発散して行く。彼らは歌の力が強いバンドだが、それを覆い隠すほどにとにかく演奏が爆音だ。初めて彼らを見たときも脳が揺れるような音の壁に圧倒されたし、それはハポンという場所でも変わらない。根っからのオルタナっ子のGueは、やはり大きい音が好きなのだ。僕たちオルタナっ子もそれに呼応するように、音に負けないように、大きく、声を張り上げた。

包み込まれるような拍手とともに彼らはもう一度各々の楽器を手に取る。「じゃあ、Originで!」という声が聞こえた。あの夏を去来させる、甘酸っぱい一曲だ。”センチメンタルに泣いた”あの夏は人それぞれの胸の奥にあって、いつでも少し心を疼かせる。そんな思いでを描き出すような、青臭いギターソロの突き抜けて行く感覚は青空の飛行機雲のようで、ハポンの高い天井に谷の歌声と相まって、高く、高く響いて行く。 響く歓声と再びの熱い拍手に応えながら、彼らはその日の演奏を終えた。熱い想いはその場にいた人の胸に、それぞれの形で宿って行くだろう。

  1. 世界には響かない
  2. Hello my anthem
  3. 空論
  4. ダブル
  5. ホワイトピーク
  6. フィールド

アンコール. Origin

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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