disc reviewライターTomohiroの見た2016年(今年のベスト10枚)

tomohiro

年の瀬も押し寄せてくる師走も末日が近づいてきましたね。皆さんにとって2016年はどういう年でしたか?今年もたくさんの音楽を聞いてこれたことはとても嬉しいことです。来年も音楽好きにとって良き年でありますように。

 

早速なのですが、今年の10枚というのを選んだので発表したいと思います。

順不同です。

 

1. Frameworks 『Smother』

 

前作からの期待を大きく超えてきた躍進の2nd。US激情において、変わらずオンリーワンの存在感!

まずもって、Frameworksというバンドは、激情、ポストハードコアと呼ばれるような界隈において、現行のバンドの中で一番好きなバンドです。

一昨年リリースされた、1stアルバム “Loom”の、エモーショナルなスクリームで展開しながらも、90’sエモへの憧憬を常に感じさせるヘナいフレーズとのバランス感はすさまじいものがあり、一発で虜にされたもの。それからスプリットや7inchなど、じわじわとした動きをしながら今年世に出たこのアルバムは、なんとDeathwishリリースというまさかの展開!あのFrameworksも、Deathwishナイズドされたのかと期待半分、不安半分でレコードに針を落とした記憶があります。

 

まず耳についたのは、やはりDeathwish=Converge感のあるジャリっとした音像とカオティック要素。しかしよくよく掘り下げると、彼らの持ち味であった90’sエモインフルエンスなメロディックさや音像もしっかりと維持していて、とても嬉しい気持ちになったことを覚えています。

 

 

 

2. Oathbreaker 『Rheia』

 

感情をないまぜにして襲い来る圧倒的な音圧とメンヘラチックなクリーン歌唱の生み出す混沌。

 

続いて、ポストハードコア/カオティックハードコアからもう一枚。ベルギーの女性ボーカルカオティック、ポストブラックOathbreakerです。

このバンドに初めて巡り合ったのは、確か国内の若手激情sans visageの情報をあさっている時で、bandcampか何かで彼らの音源を聴いていた時、コメントにOathbreakerとかCarrion Springみたいだな!って感じのコメントを見かけて、そこから辿っていったという感じです。

長尺の曲ながらも、終始途切れることのないクライマックス感と緊張感で襲い来るImmortalsは、アルバム発売に先立って公開されたSecond Son of R.に対して、アルバムで裏番を張るような曲だと思っています。あくまでも欧州っぽいコードの強さで押してくる楽曲を得意としながらも、日本人にもキマるような泣きメロ、泣き進行はくどいほど。

 

 

 

3. Frightened Rabbit 『Painting Of A Panic Attack』

 

センシティブな精神性が描き続けてきたインディ・フォークに、新たにエレクトロニックな無機質さを加えた変化の一枚。

 

イギリスのインディ・フォークバンドFrightened Rabbitの新譜です。そもそもインディ・フォークって、カントリーミュージックにルーツがある音楽だと僕は思ってるので、UKのインディ・フォークってなんじゃいという話なんですが、このジャンルで形容されているメディアをよく見るので、それに倣ってこう呼んでいます。

MVみましたか?最高ですよねぇ。色素の薄い金髪美少女二人の百合ですよ。百合だこれは。神々しいわもう。

そんなわけで僕の個人的な年間グッドミュージックビデオ賞も獲得したGet Outなんですが、まぁイントロの明けていく何かを感じさせる朝ぼらけ感、キンキンに冷えた青のイメージを脳裏に焼き付ける深く残像するギターと、所在なさげなボーカル。なんともののあはれなことか。ボーカル自体に癖があるので好みはあるとは思うんですが、アルバムに一貫して散見される、コンポーザーの繊細な感情、ダークなイメージを、ダンサブルなエレクトロ要素とともに見事にスケール感のある楽曲たちに昇華させた、非常に技巧的な一枚だと思います。

レビューを書くにあたって読んだインタビューでこれほどかというくらいのネガティブシンキングを発揮していたScottの未来に幸あれ。そこがいいんだけどなぁ。

 

 

 

4.  草東沒有派對 『醜奴兒』

台湾バンドシーンを今後牽引していくことになるだろう、若手オルタナティブバンド、待望の1stアルバム。

 

やっべぇ。今年このアルバムのレビュー書いてない。。。これは間違いなくこの一年でいちばんの僕の過失です。。。

台湾のポストナンバーガールギターオルタナシーンにおいて、長らく君臨していたのが透明雑誌というバンドであることは皆さん周知のことでしょう。

しかし、今後、ジャパニーズオルタナインフルエンスも嬉しいこのシーンを率いていくのは間違いなく彼らです。
クサメロを程よく使いこなしながらも、メンバーの高い演奏技術で、ポストロックやジャジーなニュアンスを漂わせる完全確信犯の技巧派バンドである彼ら。日本で全く名前を聞かないので、僕が最初に日本に向けてレビューを書いたバンドだと自負しているのですが、間違いなくここ日本でもウケるのでみんなもっと知ってあげてください。apple musicでも聴けます。音源を手に入れるのは困難ですが。。。(台湾に旅行に行く機会があったので血眼で探して手に入れましたが、普通にカフェに並んでたので流通量は少ないと思われます。)

Facebookからメッセージを送った際には、ぜひ日本でライブをしたいと言っていた彼ら。こういった音楽が好きな方、ツアーを組んであげて欲しいです。(僕ができたら最善なのですが。)

 

 

 

5. Bolywool 『Hymnals & Bombs』

北欧らしいドリームポップを奏でる。2016年、ジャケ買いランキングナンバーワンの一枚。

この春に、大学生を卒業して、大学院生にシフトチェンジした僕ですが、卒業のタイミングで、スウェーデンとフィンランドに旅行に行きました。カードの限度額ギリギリまでレコードとCDを買いました。翌月の支払いで死ぬかと思いました。

いろんなレコードショップを回って、まず発する言葉が、シューゲイザー、ドリームポップのいい地元バンド知らない?な旅行をしていたのですが、もともと荷物になるのが嫌で、レコードを買うのは避けてました。とあるショップに入った時に、それならこれがバッチリだぜ。でもレコードは買わないんだよなぁ。ってレコメンドされて、もういいやレコードも買ったれとなった一枚です。

北欧って結構レコードのみのリリースの取り扱いが多かったから、結果ここで思い切ったおかげでたくさん新しい音楽に出会えたので、いいイベントだったなぁと。そんな思い出補正も入った一枚です。

ちなみにこのグッドなボーカル、ゲストボーカルなんですが、そのひとがやってるWestkustも最近レビューしたのでよければ読んでください。

 

 

 

6. サニーデイ・サービス 『DANCE TO YOU』

説明不要のJPOP20年選手、サニーデイ・サービスのここでも期待を超えてくるグッドミュージック。

 

サニーデイ・サービスはいいぞ。僕は24時というアルバムで入った彼ら、24時が良すぎてそればっかずっと聞いていたわけですが、実家帰るし、なんか車で聴く音楽買おうと思って立ち寄ったタワレコで手にしたのが今回の新譜。店員さんにどこにありますか?って聞いたら、「髭ちゃんの隣にあると思いますよ〜」って案内されて髭を髭ちゃんって呼ぶの、いいよなって思いながら買った一枚。

フォークロック全力だったあのころから20年経っても未だに変わらない甘い歌詞を綴りつつ、音楽自体は徐々に洗練されてきているという、その新旧が入り混じったバランス感が至高の一枚ですね。

最初に購入に踏み入ったきっかけはセツナなんですが、潮風香る爽やかチューンのこの曲が大好きなので、MVはこっちを載せておきます。本当にいつ聞いても素晴らしいバンドですね。

 

 

 

7. ナードマグネット 『CLAZY, STUPID, LOVE』

日本のリヴァースクオモ率いる関西パワーポップ、全曲アンセムの珠玉の一枚!

やっぱりパワーポップって言われると、Weezerが思い浮かんでしまいますね。ブルーとピンカートン、どっち派ですか?

僕はピンカートンの方が好きなんですが、それはさておき、日本随一のポップネスとパワフルなギターサウンドが持ち味の目下疾走中のキャッチー大本命、ナードマグネットのブルーアルバムが出ましたよ、という一枚ですこれ。

Mixtapeが入ってるのも嬉しいし、そもそも全曲アンセムとか書いたように、捨て曲がないアルバムで、歪みまくったギターながらも疲れなく聴けるクランキーさも存分に詰まった脂ののった一枚です。いやー、これを機にみんなこういう音楽好きになった欲しいな〜!って気持ちがあふれ出る愛の詰まった作品。

 

 

 

8. Gue 『Character』

 

京都発、若手オルタナティブバンドの見せた憧憬と踏み出した一歩目

みなさん知ってますか?Gueというバンドを知ってくれていますか?

昔僕がバンド活動に励んでいた頃に、京都でライブをする機会がありまして、その時に一緒にライブをさせてもらったのが、このGueというバンドです。それ以降すっかり僕はトリコで、今年はこのサイトの自主企画ライブにも出演してくれました。

洋楽邦楽問わずいろんな音楽を聴く人にとって、日本のバンドに特有なものとはなんでしょう?僕は歌詞、すなわち日本語の力だと思っています。日本語の力をストレートに、美しい言葉で僕らの胸に響かせてくれるのが、このGueというバンド。ブッチャーズを中心としたあの頃の札幌のバンドからのインフルエンスをビリビリ感じる、時にシブい楽曲も最高にグッドなんです。ボーカル谷のしゃがれた声がまた。。。(言葉を無くす)

基本的にメジャーどころを選んでいるつもりというか、自然とそうなったこのコラムで唯一、インディーズもインディーズなところからの推薦です!みんな聞いてくれ!

 

 

 

9. JYOCHO 『祈りでは届かない距離』

 

飽和するマスロック/ポストロックシーンに新たな風を吹き込んだ、まばゆいタッピングの嵐!

みなさんご存知、宇宙コンビニが解散してから一年半以上の時が経ってしまった。ポストロック自体が飽食気味だった僕でも、宇宙コンビニだけはめちゃくちゃ好きでずっと聞いていたわけなんですが、そんな中心人物Gt. だいじろー氏が強くなって帰ってきたのが、このJYOCHOなわけです。

これまでの宇宙コンビニの発展系で、ポップスにこれでもかというくらいみずみずしい超難度タッピングを詰め込んだ、いわばキメラみたいな一枚です。そこまで叩くのかというような気持ちで聴くともう笑みもこぼれまくりで、口元もほろほろですよ。

年末にガッと発売されてあんまりの衝撃のあまり、みんなこれ好きだよなー、でも俺もやっぱ好きだわくっそー!という気持ちでこの10枚の中に入ったわけですこれ。来年以降の活動にも当然期待が高まりますね。

 

 

 

10. Whitney 『Light Upon The Lake』

 

今年間違いなく一番いいインディーロックをやっているアルバム。

ひどいサブタイトルですねこれ。語彙力が死んでいる。

本当に素晴らしいものって、死ぬほど語れるか、マジで言葉にできないかのどちらかだと思うんですよ。マジで言葉にできなかったすごいアルバムですこれ。

もうこれあんまり語りたくないんで聞いてください。みんな買ってください。全員です全員。以上、解散してください。

 

今年の総括。

今年は、ようやくこのcllctv.という場をうまく活用して、いろいろ動き出せた年でした。アライヨウコさんのインタビュー、初の自主企画、僕個人としてはディストロの始動等、このサイトがきっかけで生まれたエネルギーが確かに僕の中にはあります。みなさんにとってもそういう場所であったらとても嬉しいです。来年もたくさん音楽を聴いていくつもりなので、更新を楽しみにしていてもらえたら嬉しいです。みなさんの好きな音楽もたくさん教えてください。

 

今年一年も本当に関わってくれた皆さん、読んでくれた皆さんありがとうございました。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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