disc review企画ものと侮るなかれ。ブラックの匂いのするハイクオリティダンスポップ

shijun

LIFEBLACK BISCUITS

release:

place:

まだ音楽が元気だった時代の話。浜田雅功と小室哲哉が「HEY! HEY! HEY!」の企画で手を組んでリリースした「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント」は213万枚を売り上げ、1995年のシングルチャートで2位になった。これはお笑い芸人の出したCDでは歴代1位の売上だという。では2位は?とんねるず?猿岩石?

そう、2位こそが今回取り上げるBLACK BISCUITSの「Timing」なのだ。お笑い芸人さんかのシングルによるミリオン達成は今までに7枚。そのうちの3枚が同じ番組、「ウッチャンナンチャンのウリナリ!」から生まれているのである。これだけの売り上げを誇っているのは、テレビ番組の企画物であるゆえの物語性や、タレント自体の人気は勿論の事であるが、それ以上に、曲の良さ、というのがあることは間違いない。特にBLACK CISCUITSに関しては「ウリナリ」を知らない世代にも訴求する力のあるユニットだと感じ、今回れビューさせていただく。(私個人としても、「Timing」以外はあまり記憶になく、最近アルバムを入手して感動した、という色が大きい。)

台湾出身のタレントであるビビアン・スー(ビビアン)を中心に、ウッチャンナンチャンの南原清隆(南々見狂也)、キャイ~ンの天野ひろゆき(天山ひろゆき)によって結成されたユニットであり、途中から中国出身のケディも参加し、CDにおいても「Bye Bye」のみ参加している。もともとウリナリで売り出されていたポケットビスケッツが楽器を演奏するユニットであったこともあり、こちらは「ダンス」を主軸に打ち出していた(南原はサックスを演奏していたりもするが。)。そのために用意された踊れるサウンドが、彼らの持ち味である。踊れるサウンドの代表格であるファンクを基調としつつ、当時流行していた派手でダンサブルな打ち込みも取り入れたサウンド。ディスコチックであり、縦ノリも横ノリも可能なハイクオリティなダンスミュージックであると同時に、J-POPのフィールドで戦うためのキャッチーなポップさ。そしてビビアン・スーのエキゾチックな歌声と南原清隆、天野ひろゆきのストレートで親しみの持てる歌……と魅力をあげればきりがない。

Choo Choo Trainの中西圭三、そして小西貴雄の黄金タッグでの代表曲「Timing」。バキバキのチョッパーギターが暴れまわるイントロ。小気味良いカッティングギターと打ち込みの融合によるダンサブルなサウンド。サックスソロも心地よい。メロディもキャッチーだし男勢とビビアンの掛け合いも楽しい。CoCoやV6に楽曲提供している川上明彦の「Bye Bye」。90年代後半感バリバリのサビメロがエモく、バイバイという言葉の持つネガティブなイメージをほんの少し、エッセンス程度に生かしつつ。ケディの粘っこい歌声は好みが分かれるところかもしれないが、ビビアンとの歌声との対比は美しい。サビの裏のホーリーでさりげないシンセがまた良い。アルバムバージョンとして、ラスサビのひと回しめをまるまるアカペラにした思い切ったアレンジも切ない。後ろのトラックも16ビートを基調としつつ、ファンキーでダンサブルに仕上がっている。

SMAPSHAKE」「ライオンはーと」「ダイナマイト」「BANG BANG バカンス」などでお馴染みの小森田実の「Relax」は南原と天野中心の楽曲。ちょっとSMAP的というか、このころの日本人のワールドミュージックの解釈を感じるサウンドが面白い。レトロなシンセが現れたり、かと思えばボコーダーボイスが現れたり、「キャッチーだけどそっちに行くのか!」と驚かされるサビがあったりと、J-POPとして安心して聞ける範囲で驚きが盛り込まれている。SMAP「青いイナズマ」の林田健司によるデビュー曲「STAMINA」。横ノリのファンキーなナンバーで、色っぽいギターも随所で聞ける。サビが二回あるような曲構成もよく、いい意味で売れ線ではない感じが楽しいスルメ曲である。

ケディ以外の三人のソロ曲も収録されている。久保田利伸のバンドメンバー羽田一郎によるビビアンのソロ、「Romantic」。関ジャニ∞やSexy Zone、さらにはニュース番組のテーマ曲まで手がける大坪直樹による南原ソロ曲「Keep」。南原の歌声がFLYING KIDSっぽいのが面白く、曲調的にもそこらへんの匂いを感じるか。ビビアンの色っぽい歌声を生かしたトロピカルファンクとでもいうべき音楽。GALBOで活動していた野口健一による天野の「Choice」。シングル曲4曲がアップテンポ気味なこともあり、ソロ曲はどれもしっとりしたアレンジになっているが、それでもなおブラック的な匂いを失っていないところに、BLACK BISCUITSの強固なコンセプトを感じる。(「ブラック」ビスケッツだからか?)

さらにアルバムにはシングル曲4曲の中国語バージョンremixと、ハウスミュージッククリエイターHiroshi WatanabeによるNON STOP MIX、そして「Relax」のビビアンボーカルバージョンが収録されている。クラブシーンを見据えられるサウンドを持っていたBLACK BISCUITSならではと言えるだろう。番組の企画ものと侮れることなかれ。今こそ、BLACK BISCUITSを再発見するべきなのだ。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

このライターの記事を読む