disc review凍りつく花弁は、色鮮やかに燃え、滴り落ちる

tomohiro

RheiaOathbreaker

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ベルギーの4人組ネオクラスト・ポストブラックメタル、Oathbreaker。これは前作”Eros|Anteros”収録曲であり、僕がこのバンドと出会った曲でもある。序盤から押し寄せる濁流のようなブラストビート+トレモロリフというブラックメタル要素を踏まえながらも、いうまでもなくConvergeリスペクトながらも、彼らなりの美学を感じるメロディアスなギターフレーズ。一瞬で引き込まれ、毎日のようにこのMVを見ていた。しかし、その時僕は一つ気づいていなかったことがある。皆さんは気づいただろうか?このバンド、女性ボーカルなのである。

音像からピンと来る人は来るだろうが、この女性ボーカル版Convergeのようなバンドは、いうまでもなくConvergeのJacob主宰のDeathwishからのリリースである。特にDeathwishからの初作”Maelstrøm”はConverge色が強く、というかもはやConvergeだろってぐらいのベッタベタなリスペクトっぷりを披露してきており、しかしながらSnapcaseRefused周辺のメタリックなモダンヘヴィネスとの共通点も見えるどちらかというならばメタルとして語る作品であった。

 

それから5年を経て、リリースされた3rdアルバム”Rheia”が今回のレビューなのだが、2ndにして垣間見せ始めた、同レーベルで言えばdeafheaven、その枠で無いならDownfall of GaiaNo Omega等ポストブラック、ネオクラスと周辺を下敷きにした新世代のクロスオーバーバンドへの共鳴というか、そういった方向性をさらに推し進めた作品となる。男臭さすら感じるメタリックだった1st、メランコリックさを手に入れた2ndを経てここに至る3rdで特筆すべきなのは、これまで男顔負けのパワフルなスクリームを披露してきたCaro Tanghe嬢のクリーントーンを実にうまく用いているところだろう。湿った教会で歌われているような艶やかさと憂いを帯びた美声を編み込み、曲尺も大幅に伸び、楽曲としての芸術面、構成力に焦点を絞った、より聴かせるつくりのアルバムとなっている。#1 “10:56″はCaro嬢の独唱により幕を開けるイントロトラック、そこからなだれ込む#2 “Second Son of R.”はレビュー冒頭の2nd収録”No Rest For Weary”の流れを汲むキャッチー&カオティック、そこに緩急、轟静のアップダウンをうまく取り入れより一層のバランス感を得たリードトラック。終盤の絶叫はそのままアルバムの幕を引きそうな悲痛さがこもる。続く#3 “Being Able to Feel Nothing”は地を這うミドルテンポ寄りのブラストビートがネオクラスト色、中盤のメロディと絡むコードワークも見事。#4 “Stay Here / Accroche-Moi”は完全なアコースティックで第一部完の様相を呈する。

第二部の始まりとなるのが#5 “Needles In your Skin”で、ひたすらに押し潰されそうな凄惨な展開が続き、中盤のアルペジオのクサメロ加減にも感情が高ぶる。#6 “Immortals”は重なるクリーントーンのコーラスワークの歌モノ性すら感じる曲で、一度引いてからのディストーションが大曲系ポストロックの様相。インストトラックの#7 “I’m Sorry, This Is”は続く組曲#8 “Where I Live”、#9 “Where I Leave”への導入。ブラスト、テンポダウン、緩急を操りストーリー性を持たせた前者に対して、エンドロールのように働く、実質ほぼワンフレーズで9分を語り尽くす後者は2曲揃って壮大さが際立つ。#10 “Begeete”はこのアルバムのラストトラックであり、ヒンジの軋むような不協和音と深いリバーブに沈む静かなトラックで、映画でいうならばエンドロール後の静寂のような、あるいは次作への予兆のようにも感じ取れる。

 

1stの時点で果たしたと言っても良いConverge化に終着点を置かず、意欲的に進化を続けてきた彼ら。3rdアルバム”Rheia”は彼らのこれからのより一層の広がりを感じ取れる作品だった。

 

購入はamazon?いやいや、国内でのネオクラストといえばもちろん、3LAからよろしくお願いします。

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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