disc reviewヘヴィ・トラフィックの中心に立つ、Djent界の若き旗手

tomohiro

Bilo 3.0David Maxim Micic

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セルビアから、Djent、モダンヘヴィネス、プログレメタル界隈に一石を投ずる若きギタリスト、David Maxim Micicの作品集Biloシリーズの完結作となったBilo 3.0。バークリーで音楽を修めたエリートギタリストたる彼は、Destiny Potatoなる奇妙な名前(Djent界隈あるあるといえばあるあるなのだが)のバンドで2011年より活動してきた。ゴリゴリのDjentスタイルとポップス贔屓なキュートな女性ボーカルとを組み合わせることで、Djent仲間たちからもさぞ奇妙な目で見られていたことかと思うが、そんな彼の豊富な教養に裏打ちされた個人作品集が、David Maxim Micicなのである。

 

Djentyなリフ、ギターのジョギンジョギンな音と絡むポップスボーカルとが結構クセになる

 

さて、ソロ活動としての彼は、またDestiny Potatoとは違った魅力にあふれる。アンビエントライクな展開を待ち味としながら、ストリングス等も取り入れ、10分近いような壮大な楽曲を得意としている。ピアノとストリングスが美しい新緑と碧緑の美しい調和を見せるイントロトラック、#1 “Everything’s Fine”と、そこから展開する#2 “Where is Now?”は2曲で1曲のような組み合わせとなっており、どちらも、随所で聞くことのできる中華の風を感じるオリエンタルなヴァイオリンが、王宮から見下ろす極彩の世界を脳裏に描かせ、シンガロング必至のドリーミーなメロディを盛り込みながら、壮大に展開していく。また、”Where is Now?”では、ポーランドのDieperseより、ギタリストJakub Zyteckiが参加しており、クリーンギターを力任せに早弾きで弾き倒すソロがえげつない。

続く#3 “Smile”は幾分ポップなイントロから始まる。突然の下手なグロウルもどきの女性ボーカルに少々腰が引けたりもするが、サビの爽快感はさすがと言える。中盤訪れる、Peripheryに喧嘩を売らんばかりの超難解Djentフレーズ、およびそこからオペラボーカルがなだれ込むマスコア的展開には思わず笑ってしまうのではなかろうか。ゲスト参加のJeff Loomisのギターソロもまた痛快で、The FacelessのMichael Keeneのギタープレイを思い出すDjentボーイも多いのではないだろうか。Jeffのが全然年上だけど。#4 “Nostalgia”はピアノと絡めながらアダルトに展開していく楽曲だ。インストトラックであり、全編を通してDavid Maxim Micicのギタープレイが味わえる。本人の得意とするであろう、フュージョンメタルな1曲。

そしてこれまた壮大な一曲。#5 “Wrinkle Maze”、ここで王道でスウィートなギターソロを披露するのはPer Nilsson。このトラックをイントロとして最後に12分かますのが、#6 “Daydreamers”だ。複数のゲストボーカルも盛大に、オーケストラを見ている気持ちにすらなるような、圧倒的迫力の音像で迫る。子どものハミングみたいな下手クソな歌を中盤に挟み、一旦はそのテンションを落とし、ミドルテンポのままに、お得意のフュージョンスタイルのギターソロ、そして最後は男性ボーカルでガツンと盛り上げる。

 

もはやプログレメタルというにも枠に収まりきらなくなりつつある彼のギフテッドなセンスが全編を通して溢れ出る名作だと思う。どんなバンドっぽいとか野暮な話をするなら、Ne Obliviscarisとかよく引き合いに出されるDevin Townsendとかその辺りだろうか。Sikthとかも結構ありなラインかな。ハイレベルなジャンルのクロスオーバーを楽しむことのできる1枚。彼の作品を買うなら僕のオススメはBilo 3.0だ。

 

おすすめは#1,2。特に#2のヴァイオリンと激歪みベースの絡みは必聴。

 

bandcampで買いましょう。

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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