disc review揚々と踏み鳴らすステップと初夏の薫風によせて

tomohiro

LiltHikes

release:

place:

現在The Fall of Troyとともにジャパンツアーを回っている真っ最中の、USテキサスはオースチンの若手マスロッキン、Hikesの最新作。冒頭に載せたこの動画の楽曲、”Spring Forward”が収録されているのは2014年作だが、初期のリリースにしてすでに聞くものを黙らせる、〇〇フォロワーにとどまらないオリジナリティと高いクリエイティビティが感じ取れる。動画の説明に”THIS IS OUR BACKYARD!!”って書いてある感じもエモくてとてもいい。

ライブの際にThe Fall of Troyへの熱い思いを語っていたGt/Vo. Nathanの言葉や、今回紹介する”Lilt”は日本でtoeの美濃氏による録音という事実等彼らがポストロックとポストハードコア、スクリーモ方面への熱い憧憬を持っていることはまぎれもない事実として感じ取れたが、前述したようにそれらのフォロワーだという言葉で片付けることは到底できない、彼らとしての確固たる姿がある。全てのフレーズを指弾きのみで弾ききるNathanのギターはポコポコと軽快に楽曲を彩り、少年のような伸びとアダルトな枯れも漂わせる彼の歌声もまた然り。また、Math-Folkを謳うにふさわしく、Nathanが色付けする楽曲の骨組みにはアルペジオと穏やかなコード感を漂わせるUSインディーへの強い憧憬が見て取れる。

彼らの軽快なマスロッキンが味わえる#1 “Granddad”はまさにアルバムの一曲目として名刺代わりにふさわしい曲で、もはやこの手のジャンルとしては珍しくは無くなってしまったが、これどうやって歌いながら弾いてるの?系の唄心にあふれたタッピングフレーズに乗る弾むような歌声が好印象だ。歌の配分としては曲中において決して多くはないが、要所要所に伸びやかに歌い込まれる感覚は歌モノとインストの間を行く居心地のいい塩梅。#2 “Onset”は間違いなくアメフトインフルエンスと断言できるアルペジオとタッピングの組み合わせの清涼感が素晴らしい。そしてこのアルバムの中でもっとも歌メロが白眉なのもこのトラックだろう。左右のツインリードにパン振りしつつ要所要所でハモりフレーズを確信犯っぷりにはこちらとしても頷かざるをえない。#3 “Habit”はインディー色を強めたミドルテンポのトラック。ボーカルと帯同するサビでのギターワークはライブでのシンガロンを彷彿とさせる。またアウトロでのアルペジオのハモりのキラキラ感とそれに続く合唱にはそれはそれは胸も高鳴る。#4 “Timothy”は彼らの持ち味の一つである踊りだしたくなるような軽快さがよく現れたトラックだろう。フジロックとか山系のフェスで聞きたい。

 

正直な話、昨日ライブを見るまで全くノーマークだったし音源も聴いていなかったバンドだった。しかし、そのライブパフォーマンスの熱さと後で音源を聞けばこれやってたなと思い出せる、一辺倒で終わらない確かな楽曲の個性も合わせて、まだ日本にいるうちにぜひ見て欲しいバンドだと感じる。明日に日曜日はツアーの最終日が大阪であるはずなので、このレビューで気になってくれた関西方面の人がいたら迷わず足を運んで欲しい。なんせメンツの良さに対してチケット代が安すぎる。。。

 

購入は信頼のstiffslackからどうぞ。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

このライターの記事を読む