disc review煌々と燃ゆ激情、瞳孔を掠める明滅と叙情

tomohiro

Natures Arm's Encircle AllOld Soul

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ミシガンの6人組(だと思われる)ポストブラック/激情、Old Soulの1st ep。我が国のheaven in her armsや北欧の激情諸侯、あるいはDeafheavenにも通じるところのある、エモーショナルで壮大な楽曲を得意とする彼ら、このアルバムは4曲で収録時間30分の大曲志向だ。と言っても実際に大曲と呼べるのは、アルバム全体の半分を占める#4 “Shallows”の12分半のみなのかもしれないが、その他の曲も4分程度という尺を感じさせないドラマチックで焦燥感を煽る名フレーズも次々飛び出す、非常に聞き応えのあるアルバムだ。

アルバムを通して紡がれる少女の語りから始まる#1 “Ocean”ではクリーンギターからディストーションに切り替わり、壮絶なスクリームが序盤の山場。比較的スローなテンポで後を引くような感情の炸裂を残しつつ、クリーントレモロのツインギターでポストロック的立体感を出しながら進行し、楽曲も残り1分というところで突然飛び込むハイスピードのメタリックなリフからの音の洪水は圧巻。#2 “Triton”はブラックメタル、ポストブラック方面からの強い影響を感じるドラムのブラストと表情豊かに進行していくコード感、中盤に再び挿入される少女の語りとそれを遮るようにして爆発する感情の波にアドレナリンがドバドバ出てくる多幸感を感じる。#3 “Orbit”は#1 “Ocean”と近い構成を持つ楽曲だが、こちらにはより強いエネルギーと消費カロリーを感じる。

そして圧倒的な情報量と熱量で攻めきる#4 “Shallows”は12分を緩急を見せつつも絶え間ない感情の攻勢が続く名曲。

初期より激情的なひどく歪んだスクリームとモダンなクロスオーバー的佇まいで独自性を発揮してきた彼ら、2014年、2016年とFluff festにも出演しており、heaven in her armsとの共演でもあった等、ハードコアリスナーの間で確実にその地位を得てきているように思われる。現在も数枚のEPをリリースし、他バンドとのスプリットもこなしつつ、コンスタントな制作活動を続けているのも嬉しい限りだ。最近のBlackgazeと呼ばれるような新興ジャンルの流れに興味の有る諸兄はぜひ聞いてみてほしい。

目下最新作より。ポストブラックの枠組みを出、(というか飽きたのだろうか)現在はテクニカルなアプローチも取り始めているよう。(ちなみにこのアルバムの一曲目がめっちゃかっこいい)

シューゲイザー、大曲系ポストロックと激情の融合がハイレベルに達成された大名曲”Emerald”はNICとのスプリットに収録。2分半からの絶叫は圧巻。

 

購入はディストロもしくはbandcampで。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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